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Digikid84の新曲「You Got the Groove」のリミックスを行いました
何かとバタバタした一週間でした。リリース告知はもちろんのこと、リミックスの締め切りから会社の決算、契約書の処理まで様々なジャンル(笑)の仕事があり、何だかあっという間に1週間が過ぎていった気がします。今日もLAからの依頼が入って制作をする予定でしたが、時差のお蔭で持ち越し、ホッとしているところです。
今日は以前 “Hey Boy, Hey Girl” をリミックスしてくれたフランスのアーティスト、Digikid84の新曲 “You Got the Groove” のCaptain Funk リミックス(iTunes)を終えました(原曲)。彼とはもう4、5年の付き合いがあるものの、20代後半でこういったテイストの楽曲を作ることに改めて驚かされますが、この曲を含めた彼のデビューアルバム”Timelapse” を聴くと、彼が単なるトラックメイカーではなく、ポップセンスのある一流のメロディメイカーであることがよく理解できます。フランスは日本とはかなり事情が違っていて昔からディスコやファンクを愛する土壌があるので、エレクトロと銘打っていてもそのルーツが見え隠れするミュージシャンが非常に多いですが、彼と(”Piece of You” をリミックスしてくれた) Bestrack Production はその中でもルーツ色が強く、稀有な存在だと思います。
彼らを始め現在のフランス、ドイツ周辺のエレクトロ・アーティストの中には、僕のCaptain Funk としてのデビュー作 “Encounter with…” をリアルタイムで聴いてくれていた人も多く、お互いのコアな部分が近いことを理解した上でコミュニケーションを取っているので非常にやりやすいです。なので、今回のDigikid84 のリミックスは最近の中でも特にディスコ・ファンク色の強いアプローチを取らせてもらいました。彼のツイートにもあるように、本人も喜んでくれたみたいで嬉しいです。
Captain Funkのファースト・アルバム「Encounter」を振り返って
“Encounter” と言えば、日本ではその次のリリース以降急激に Captain Funk の名前と音楽が浸透したために、また “Encounter” と同期するようなシーン、ムーブメントが全くと言っていいほど日本にはなかったために、実は殆どの人の認識から抜け落ちている1枚なのではないかなと思うことがあります(そこそこの成果はあった記憶がありますが、その後のリリースに比べると数では及びません)。しかしながら、あのデビュー作こそが Captain Funk という名前で活動していこうと思ったきっかけであり、自分の幾つかあるルーツの中でも最も愛着のある「出自」であることには変わりありません。”Heavy Metal” “Heavy Mellow” 以降のここ最近のCFは、このソロプロジェクトを始めた時に着想した、当時はやりたくても力量が及ばず実現出来なかったアイデアを発展・具現化させている、と解釈して頂いてもよいかと思います。
もちろん、それ以降のリリースに含まれている要素や学んだことも今のCFサウンドに十分活かしているつもりですし、今後も他名義なども含めてそういった側面をもっと前面に打ち出すこともあるでしょうか、一部の時期(の作品)は、「メロディとグルーヴの楽しさを同時に伝える」という、自分の中でずっとCFのコンセプトの根源として考えている視点よりも、記号・スタイルやトレンド的なインパクトの方が先行したので、恐らく人によっては現在自分がCFで行っている音楽との接点が見えずらい場合もあるのだと思います。映画監督や俳優のように毎回作品名と名義(役名)を変えられればそんな問題も軽く解消出来るのかも知れませんが(笑)、現実的にそれは不可能ですよね。
「認識の溝」を埋める事より、今「最善」だと信じることをこなし続ける
冗談はさておき、上のDigikid達とのやり取りの例を挙げるまでもなく、その人の聴いてきた音楽のルーツ(原体験)や置かれている状況によって、音楽の聴き取り方や認識の仕方は当然違うものです。そこの違いや溝を埋める作業を音楽が果たせた時は作り手としてはこの上なく嬉しいですが、原体験や認識の仕方が違う以上、全ての溝を埋める音楽は当然ながら存在しないし、イメージや先入観が災いしたり、ひいては人種的・生理的に全く受け付けないといった、どうやっても歩み寄りようのない、音楽以前の溝もこの世には無数に存在します。それらをひっくるめて、発信側だけではコントロール不可能であるこういった「認識の溝」をリアルタイムならまだしも、後追いで埋める作業に必要以上に時間を費やすのは全く持って無駄だと思っています。どんな仕事であれ、果ては人間関係であれ、移り変わり行くもの全てを背負い込んでいては何も先に進まないし、クリエイティブなことは出来ません。大事なのは今ベストだと信じていること、自分として「最善」だと思うことをしっかりこなすこと、これ以外にありません。
また、上のような状況は日本に限定した事であって、前述の様なヨーロッパの幾つかのエリアではまた全然印象が違いますし、アメリカやその他の国に至っては当時流通していないので、殆どにおいて今の音が全てです。以前このFindingsで「その人が聴いた時がリリース日」という話をしましたが、結局はどのエリアにせよ、「その人が知った時点のCFがCF」でしかないのですね。myspaceや一昨年開始した Facebook CFページの6000人の人達は、現在のCFの音楽を聴いて集まってきてくれた人達が大半を占めると思いますし、その人達の支援の声が今の自分の原動力になっているわけです。特に Model Electronic を立ち上げて以降のリリースは僕が完全に自腹で行っている「商売」でもありますから、音楽面だけでなく、ビジネスとしても自分なりに最大限覚悟を据えて取り組んでいるつもりです。
それがファンクだとまとめるのはちょっと無理があるにしてもね(笑)。