Dark Modelファースト・アルバムから「Ran(Resistance)」と「Fate」を紹介します。「Ran」はクワイア(合唱団)サウンドを取り入れた、アグレッシブなオーケストラ・エレクトロニック・サウンド、「Fate」はCaptain Funkにも通じる、エレクトロ色の強いオーケストラサウンドが特徴です
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日本はGW 真っ只中ですね。このところリリースの件などで色々と東京と連絡を取らなくてはいけないので、日本とアメリカ両方のカレンダーをチェックしながら仕事しています。iPhoneから日本に国際電話をかけなければならないこともしばしばありますが、じっくりと打ち合わせする時にはスカイプが本当に重宝します。
不便な時代の方が人は誠実だった?
とはいえ、僕がイタリアから12インチレコードをリリースした’97年には全く想像できなかった世界が広がっているのは確かです。当時はインターネットもまだ電話のモデム経由で、メールもテキスト程度しか送れなかったので、海外のレーベルとのやり取りにインターネットを使うことはあまりなく、デモ音源をDATテープ(ってもう皆さん知らないでしょうけど)で国際便で郵送し、返事と契約書はFAXで返ってくる、というのが普通でした。そもそもレーベルの住所すら分からないので、12インチを買ってはメモって、それを頼りにデモテープを送っていたことを覚えています。
ただ、なぜだかは分からないですが、(海外に送ったデモに関しては)どのレーベルも100%に近い確率でメールなりFAXできちんと返事を返してくれました。現在アマチュアのクリエイターがSoundCloudやDropboxでデモのURLを貼り付けて送っても、なかなか相手からの返事は見込めないであろうことを想像すると、テクノロジーが進歩すると、逆に(=アクセスのしやすさとは反対に)人間の誠実さや熱意は伝わりづらくなる傾向にあるのかも、と考えさせられるところはあります。
Dark Model 「Ran (Resistance)」
それはさておき、Dark Modelのアルバムからの試聴楽曲をさらに2つアップしました。一つは全くの新曲”Ran (Resistance)”、もう一つは”Fate” のアルバムバージョンです。”Ran”は「走る」のRunの過去形ではなくて、日本語の「乱」です。これがネイティブのアメリカ人には理解できないようで、「何で過去形なの?」って聞かれるので(笑)、”Resistance” という副題をつけてあります。黒澤明監督の映画「乱」も英語版ではこの綴りになるのですが、黒澤監督の映画を見たことのあるアメリカ人自体、(映画業界の人を除けば)意外と少ないようです。
この楽曲はクワイア(合唱団)サウンドを取り入れつつも、かなりアグレッシブで扇情的なエピック、オーケストラ・エレクトロニック・サウンドになっていて、Dark Modelのこれまでの楽曲コンセプトをさらに拡張させた新しいタイプの曲と言えると思います。イントロなど、ショッキングなパートが幾つかありますので、1回目はボリュームを抑えめにして聴いて下さい(笑)。
Dark Model 「Fate」
“Fate” はDark Modelを立ち上げた2012年6月に披露した幾つかの楽曲の中の一つですが、今回ミックスや素材などを細かく修正・改善しました。よりビートは強くなり、オーケストラ・サウンドもメリハリのある音になったと思います。Dark Modelは所謂ダンスミュージックとも、サウンドトラックとも違うため、ミックスの面で何かを参考にするということがなく、毎回曲ごとにゼロベースで鳴り方を考えるようにしているのですが、その中でもFateは比較的ダンスミュージック(もしくはEDM)に近い鳴り・音圧をしていると言えそうです。
音圧問題について思うこと
音圧といえば、よくミックスやマスタリングに関する記事を見ると、RMS値はマイナス何dB辺りが適切、みたいな話題を目にしますが、メーターの「絶対値」を頼りにするよりも、自分の聴感上・体感上の「経験値」を大事にすべきだと思います。音圧を上げるか上げないか、どの程度の音圧で聴かせたいかは、その音楽にとって必然性があるかないか(結局は本人の主観でしょうが)によって個別にジャッジすべきで、一般論や教科書的なガイドラインは存在しないと考えた方が良いでしょう。それよりも、「バランスが取れてて素晴らしい音楽」と「バランスが崩れまくってて素晴らしい音楽」を両方沢山聴いて「耳の筋肉」を養い、自分の中の感動の振れ幅がどれ位あるのかを把握することの方が先だと思います。
この辺りは料理とも共通するところが多いと思うのですが、このまま続けると長くなるのでまたの機会に!