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先日紹介したインタビュー記事の中で、Dark Modelの曲「Moment of Truth」を説明した際に「ドラムライン」という言葉を使いました。この言葉は2002年のアメリカ映画「Drumline」が公開されて以降、日本でもよく知られるようになりましたが、アメリカではこの映画のタイトルを指す固有名詞というだけでなく、高校や大学のマーチング・バンドでの、パーカッションによるアンサンブル/セクション一般を意味する言葉として使われます。ウィキペディアでは後者の意味での“Drumline”の解説ページも設けられていて、そこでは”A drumline is a section of percussion instruments usually played as part of a musical marching ensemble.”と定義されています(2015年5月末現在)。
とはいえ、上記映画での有名なバトルシーンを紹介しないわけにはいかないですね。サウンドトラック自体は多少色付けしてある可能性もありますが、ドラムラインの醍醐味や楽しさを分かりやすく観衆に伝えたという点では秀逸の映像だと思います。
僕がこのドラムライン、マーチング・ドラムのサウンドに興味を持ったのはこの映画より遥か以前、今も小学校や中学校で見られるような鼓笛隊、ブラスバンドのドラムサウンドに触れた時でした。二本のスティックからどうやってあの力強いサウンドとリズムパターン、表情豊かなドラムロールの音を生み出せるのか、子供だった自分には不思議でならなかったのを覚えています。ただ、当時自分が耳にしたマーチング・ドラムを使った音楽は、クラシカルなもの、軍艦マーチ的な「縦ノリ」なものが殆どで、その後自分がリスナーとして没頭したロックやファンク、ディスコなどの音楽とのリズム面、アンサンブル面での接点は長らく見えていませんでした。強いて言えば、中学校の時友達のドラマーがブラスバンド部で熱心にマーチング・ドラムを練習していたのを見て(そういった基本奏法を「ルーディメンツ」と言います)、ロックを叩く上でもあのスティックさばきをマスターすることは必須なんだなぁと感心していたこととか、当時注目して聴いていたジャズ・ドラマーのBilly Cobham(ビリー・コブハム)のドラミングがえらく特徴的だった(手数が多い)のでそのルーツを辿ってみたら、アメリカのアーミーバンドに在籍していたと出てきて合点が行った、とか位でしょうか。
マーチング・ドラム的なサウンドの面白さと自分の「グルーヴ」に対する興味が繋がったのはそれより少し後、中南米やアジアのワールドミュージックをよく聴くようになってからです。80年代以降、サンバ/バトゥカーダ(下)やイスラム、ヒンドゥー、バングラ系の舞踊音楽、そしてそれこそ日本の和太鼓の響きやグルーヴ、演奏テクニックを、様々な国の様々なフィールドのミュージシャンが取り込み、融合、発展させることで思い切りモダンなものにしていきました。ダンスミュージックももちろんそれに貢献したと共に、またそこから受け継いだ要素も多い音楽ですが、この映画「Drumline」で聞けるような新しいタイプの「横ノリ」のマーチング・ドラムも、確実にそういった異文化交流(?)の流れを汲んでいることが見て取れると思います。
下は本物の空軍vs陸軍チームのバトルですが、リズムパターンの豊かさ、演奏の正確さに圧倒されますね。
次回は実際にドラムラインを演奏する際、またこういったサウンドをDTMで表現したい場合に参考になりそうな情報を紹介します。