NYは心なしか涼しくなってきた感じがして、早くも夏が終わってしまいそうな気配すらしています。日本は真夏日が続いていると聞きますので、体調管理にくれぐれもご注意下さい。
OE名義の楽曲の情報 – “Tessera” & “Hollow Stone”
今日はDark Modelのレビュー情報から少し離れて、OE周辺のお話を。2003年にリリースしたOEのアルバム”Director’s Cut“の1曲目に収録されていた”Tessera” を、オーケストラバージョンとしてセルフカバーしました。このアイデアはDark Model のアルバムを制作している時に思いつき、今年の春にある程度の骨格を作っていたのですが、今週時間を作って完成させました。原曲の”Tessera”は(エレクトリック)ピアノ中心のパーカッシブなサウンドだったのに対して、このアレンジはストリングスを中心に構成されています。原曲が持っている躍動感・勢いを損なわずに、洗練された曲に仕上げることを目指しました。気に入ってもらえると嬉しいです。
OEと言えば、2002年のアルバム “Here and You“に収録されていた”Hollow Stone” の新しいミックスが、米スポーツブランドQuiksilver(クイックシルバー)の映像に使われています。なかなか映像の雰囲気に合っていますね。アメリカのアスリート向けのスポーツブランドの多くは、毎日の様にYoutube経由で動画をアップロードし、それぞれのブランドの姿勢に沿って様々なエピソードやストーリーを語りかけています。
この手のスポーツブランドから楽曲使用の依頼を受けることが多いので僕も映像を見る機会がしばしばあるのですが、実際のユーザーがリアリティを持って共感出来る(=自分ごととして感じられる)場面やメッセージを届けることに気を配っている印象を受けます。タレントや有名スポーツ選手を使ったドキュメンタリー的なアプローチというのは、テレビ番組でも広告でもよく見受けられますが(むしろそればっかりと言っても良い位ですね)、そういった目玉となるキャラクター=「客寄せパンダ」を使わずして映像で惹きつけるには、ストーリーやコンセプト自体がしっかりしていないとまず難しいでしょう。
リスクテイキング=未来への可能性(自由)の貯金
実は音楽にも同じことが言えます。リミックスやコラボレーションなど、有名なヴォーカリストや楽曲モチーフを使う場合はよほどの大間違いをしない限りそれなりに形にはなりますが、そういう派手な要素を使わずして曲に説得力を持たせるには、また違った工夫が必要になります。インストゥルメンタルの曲を作る場合は、そうした場面設定やストーリー展開をより明確に頭の中に描いていないといけないので、良い思考訓練になるとも言えますね。
そう考えていくと、2002-2005年辺りにOEとして創作したものや着想したアイデアが、現在の自分の創作活動に非常に大きな糧になっていることに気付かされます。新しい事を始めるということ、クリエイティブな自由を追い求めるという行為は常に様々なリスクを伴うものですが、それをしないこともまたリスクとなります。前者のリスクテイキングは時間を経て報われることもあり得るが、後者は時間が経てば経った分リスクが増えることはあっても減ることはありません。リスクテイクをするということは未来への可能性(自由)の貯金をすること。少し大げさな表現ですが、十数年前に作った自分の曲を新たにアレンジしながら、そんなことを考えた次第です。