日々のつれづれと、その日のお気に入りを紹介するマイクロブログ『Day By Day』を月別にまとめたページです。今回は2023年3月分を紹介。最新の投稿は https://www.tatsuyaoe.com/microblog/ にて。
2023年3月31日
昨日紹介したリック・ルービンが別のインタビューで「ビートルズにラモーンズを期待してはいけないし、逆も然り。それぞれの良さがあるのだから」という話をしていた。時代や創造への問題意識に応じてスタイルを変更・拡張させるタイプと、ずっと同じスタイルを貫くタイプ。創り手としては彼の発言に100%同意するが、リスナーやファンはおそらくどのアーティストにもラモーンズ的な「マナリズム(様式美)」をどこかで期待しているのかな、と思ったりもする。
I Wanna Be Sedated - song and lyrics by Ramones | Spotify
2023年3月30日
著書「The Creative Act」を出版したこともあって、最近リック・ルービンの姿をよく見かける。彼が手掛けた作品を聴く機会は減ったが、最早殿堂入りした存在であり、彼の様な破壊的でやんちゃなプロデューサーはもう二度とアメリカの音楽業界には現れないであろうことは確か。この神経科学者との対談では、科学とクリエイティビティとの接点について語っているが、予想通り、かなりニューエイジ的な思想に傾倒した人と見た。
Rick Rubin: How to Access Your Creativity | Huberman Lab Podcast - YouTube
2023年3月29日
正確で緻密な仕事をする日本人をお手本にすれば優秀なAIロボットが作れる。海外のずる賢い連中からすれば、言語的な障壁がなく従順に働く「スーパー日本人」を生み出せるとしたら、これほど使い勝手の良い人材はいないだろう。ただそれが現実化すれば、真っ先にとって変わられるのも日本人という残念な予想に直面してしまう。これは何としてでも避けなければならないが、時間が迫っている。
Break-Out - song and lyrics by Rodney Stepp | Spotify
2023年3月28日
図書館の文献についてオンラインで調べていたら、なぜか「『塩対応』という言葉は、広辞苑に載っていないが、いつごろ誰が言い出したのか?」という質疑応答の資料が出てきて、思わず吹いた。質問者がネットではなく広辞苑で調べた律義さにも拍手を送りたいが、さらに回答する側も「ちなみに神対応とは…」と余分な解説までつけていたことにも軽く感動。面白いけど、このご時世に平和すぎる(笑)。
Brenda Holloway - You've Made Me So Very Happy (1967) - YouTube
2023年3月27日
美術館や記念館を訪れると、思わず「ここ住んでみたい!」と心躍るような素敵な建築物に出会う事がある。谷口吉生氏が手掛けた東京国立博物館・法隆寺宝物館は、そんなお気に入りの一つ。ただ一つ残念なのは、こうしたミニマルな「ハコ」的な作りをした建物やコンクリート打ちっぱなしの部屋は、音がガンガンに反響して、音楽制作には絶対向かないこと。何度かその手のタイプの住宅に住んでみて、建築と音の問題は切実だと実感した。
法隆寺宝物館-作品と向き合う静寂の空間-│ARCHI-GRAPHY
2023年3月26日
たまたま読んだこのコラム、確かにチームで動くと必ず「解決策を持たない評論家」みたいな人が現れる。しかもチームの頭数が多くて、「なぜいるの?」的なメンバーが登場することも多い。これはひとえにその職場が平和、もっと言えば緊張感や切迫感が足りないからだろう。外に向かって、一刻を争う闘いをしている状況では評論家が現れる余地などない。ただ、緊張感や飢餓感というのは、今やなかなか手に入らない「贅沢品」。
なぜ「後出しの予言者」や「解決策を持たない評論家」が社内にはびこるのか
2023年3月25日
先日膝を痛めてから、全快するまで競歩スタイルの早歩きをしている。競歩のスピードにぴったりテンポが合うのがこの曲。以前はこうしたセンスの良いインディ・ロックをあちこちで耳にしたが、2010年代以降、(ト)ラップやEDMに押されて、アメリカでも急激に影が薄くなってしまった気がする。「ラテン系や黒人の若者が支持しない音楽は生き残りが厳しい」という事態は、誰も想像していなかっただろう。
2023年3月24日
AIがテーマのポッドキャストに、スタンフォード大学で機械学習を教えている女性がゲストとして登場していた。若干のアクセントで早口な英語を話す彼女は、ベトナムの貧しい農村出身で奨学金でコンピュータサイエンスを学び、その後ネットフリックスやNVIDIAを経て教鞭を取っているとのこと。自分は畑が違うが、こういう猛烈な努力家のアジア系移民に遭遇するのは、単純に嬉しい。
Super Data Science Podcast with Jon Krohn | Podcast on Spotify
2023年3月23日
現在12,3曲位のアルバム候補曲の曲順とタイトルを検討中。毎回書いているけど、曲を作ること自体よりもタイトルを考えることの方が難しい。曲によっては音よりもタイトルで印象が決まることがあるから、なおさら手が抜けない。『Judgment Day』とかは欧米では未だに反響があるし、中国のストリーミングサービスでも200万再生を超えたりしてありがたい限りだが、音とタイトルとのマッチングも功を奏した気がする。
Dark Model - Judgment Day on SoundCloud
2023年3月22日
インドの人達が”Expect Nothing”(何も期待するな)という表現をしばしば使うのを耳にする。「期待しない、信じない」というニュアンスに力点を置きすぎると、積極的な言葉に聞こえないのだが、「自分以外のものが結果をもたらしてくれるという甘えを捨てて、自分で”Make it happen”(実現させる、事を起こす)する癖をつけよう」というのがこの言葉のキモなんだと思う。Make it happenと言えば、僕はマライアの曲ではなくてこっち。
Make It Happen - song and lyrics by Playgroup, Kyra | Spotify
2023年3月21日
単一民族的な傾向の強い日本では、他人も自分と同じように考え行動する(できる)はずという「同質性の期待値」が高い。確かに国内にいると、左隣の家にプーチンが、右隣にトランプが住むような価値観のばらつきが激しい社会は考えられないが、ガガーリン並みに地球を俯瞰してみると、左隣に近平が、その上にプーチンやら刈り上げた人やらがいるわけで、他人が自分と同じように考え行動するはずがない、となる。
The World Is Yours - song and lyrics by Nas | Spotify
2023年3月20日
日本には「これは在留の外国人も理解して対応できそうか」と配慮して、サービスや制度を設計する習慣がない。マイナンバーやアプリの登録から銀行手続きまで、純日本人の自分ですら、なぜそこまでハードルを上げて複雑な手続きを要求するのか理解に苦しむサービスや制度、サイトが沢山。この「様式のハイコンテクスト」ぶりは、ジャズやプログレの超絶技巧バンドに放り込まれて「これ位弾けるだろ?」と圧迫される感じに近い。旅行時の「おもてなし」感覚を期待すると、即刻平手打ちを食らう。
Space Circus - Ali Baba - YouTube
2023年3月19日
OEのアルバムが完成(発売日は4/3)、恒例の税務申告作業も終わり、一息つきたいところだが、Dark Modelのアルバムを仕上げるという自分に課したドMなタスクが残っている。収録候補曲をiPhoneに入れて散歩しながら、構想を固めているところ。3月中に何とか完パケを、って春のセンバツ甲子園みたいなスケジュール…。
Nergal - song and lyrics by Marcos Resende, Index | Spotify
2023年3月18日
先日の話の続き。クリエイターがゲートキーパー(仲介者)の食い物になるというのは音楽業界では昔からよくある構図だが、かつては仲介側にもそれなりの矜持と、それを裏付ける努力やリスクを賭けた闘いがあった。ネットの時代になると、ゲートキーパーも素人でかつリスクも踏んでいないという、レベルの低い搾取が慣行となっている。クリエイターは安直な成功幻想や誘惑に流されず、自分のために時間とお金を投資して欲しい。
Milton Nascimento, Wagner Tiso - Vera Cruz - YouTube
2023年3月17日
昔から、曲を作っている最中に寝落ちしてしまう癖がある。名義や曲調に関係なく、気が付くと、再生していた自分の曲が終わって5分位経過している、なんてことは割と頻繁。そういう時はリラックスして良い曲が作れている証拠だと、都合よく解釈するようにしている。もう10年前の作業だが、このアレンジを作っている最中は、なぜかとてもよく寝た(笑)。
Leaving - Extended Piano Mix - song and lyrics by Captain Funk | Spotify
2023年3月16日
自分の曲をブログやSpotifyのプレイリストに取り上げてもらうためのサブミッション・サービスというのが流行っているようだ。中には全く曲を聴かずに提出料を受け取るブログや中間業者がいるようで、無垢なミュージシャンがカモになっていることも多いと聞く。ネットの世界になると、あらゆるゲートキーパー(中間業者)がいなくなってダイレクトな世界が広がる、なんて希望的観測は遥か昔。常に自分を教育しよう。
Fight The Power - song and lyrics by Public Enemy | Spotify
2023年3月15日
膝を酷使しないで汗をかくには自転車しかない!と思い、幾つか自転車売り場を物色。機種にはこだわりがないので即断してスタッフに「これそのまま乗って帰れる?」と聞いたら、「あっ、これ買わない方がいいですよ。実は僕、これ持ってて後悔してるんです。近くにうちより良質なバイクを扱ってるショップがあるので、そちらもチェックしてみて下さい」との返事。僕が見たのは商売の神なのか逆神なのか…。
Mel Torme/The Goodbye Look 1990 - YouTube
2023年3月14日
ランニング中に急に膝が痛くなり、その後徐々に痛みが増してきたので、早速整形外科に行ってレントゲンを撮ってもらった。すると「至って正常」とのこと。こういうのを「オーバーユース(使いすぎ)症候群」というらしい。「何か競技に参加したり大会に出たりするんですか?」と聞かれて、「ただ歩くのと走るのが好きなだけです、毎日3時間くらい」と答えるしかなかった。何だか珍しい奴だなと思われたに違いない。
Running - song and lyrics by Captain Funk | Spotify
2023年3月13日
先日MaxwellがBET(黒人対象のチャンネル)で歌っているのを見て、97年にNYを初めて訪れた時のことを思い出した。当時のマンハッタンはR&B一色。地下鉄はまだグラフィティだらけだったし、夜なんて物騒で歩けたものではなかったが、街中に音楽が溢れ、毎日新しい曲がこの街から生まれそうな活気に満ちていた。911を経て2013年に住み始めた時は、レコード屋も激減し、同じ街とは思えないほど音楽の気配が消えていた。
Maxwell - Sumthin' Sumthin' (Official 4K Video) - YouTube
2023年3月12日
W・バフェットの「人生最大の投資」は、株や債券ではなく、人前で話す恐怖を克服してくれた「話し方講座」だったという。僕にとって最も価値のあった投資は、ソフマップで買った中古のAKAIのサンプラーS3000。二十代も後半に差し掛かった頃、最初は使い方が分からなくて途方に暮れたあの楽器を買わなかったら、その後のデビューはおろか、作曲という道を漕ぎ出すこともなく、全く別の人生を歩んでいただろう。
Akai 1994 Product Sampler, Akai S3000, S3200, Akai DD1000, Akai DR4 - YouTube
2023年3月11日
シリコンバレー・バンクが破綻したという。遠因はコロナ以前から続くパウエルとFRBの失態だと思うが、テックや金融業界の連中のマインドは「手放し運転でフェラーリで高速を飛ばして大騒ぎしているお調子者」だから、ガードレールにクラッシュする輩がこれから多数登場するだろう。これはアメリカが生来持つ病気の様なもので絶対に治らないが、悔しいのは、真面目でお人好しな日本が毎回とばっちりを受けて、どの国よりも苦しむところ。
気い狂て - song and lyrics by Inu | Spotify
2023年3月10日
TopicsのページにOE『Compositions in Blue』のリリース紹介と、1曲目に収録されている「Mobius」の試聴動画を限定公開しました。この曲を聴いてもらえれば、アルバムの雰囲気は何となくつかめると思います。難解な音楽では決してないけど、言葉で説明するのは自分でも難しい。ということは良い作品なのでは?(爆)
OE - Mobius (from "Compositions in Blue," Apr 3rd, 2023 Release ) - YouTube
2023年3月9日
ウィンストン・チャーチルの残した鬼語録の一つに「今地獄を経験しているなら、そのまま突き進め」というものがある。不思議なことに、しんどい時期こそ後で振り返ると、輝いて見えたりする。再起不能な地獄は避けなければいけないが、時折小さな地獄を味わっておくことは、結果的に人生を充実したものにする。その人が地獄を経験したことがあるかどうかは、意外と一瞬で見抜かれてしまうもの。
Shawshank Redemption - Andy Escapes
2023年3月8日
中学校に入った頃洋楽を聴き始めたこともあって、英語の発音は学校で教わることに加えて音楽から知ることも多かった。アメリカ英語のネイティブ・スピーカーは「文字で書いているようには発音していない」というのを強烈に教えてくれたのがホール&オーツ。”Did it in a minute”という曲の「ディリリナミネー」というサビを聞いた時、これは「英語はテキストで勉強してるだけじゃあかんぞ!」というホールからの説教だと受け取った。
Did It In a Minute - YouTube
2023年3月7日
次の作品に取り掛かりました。恐らくDark Model名義になります。僕は非マルチタスク派で、複数の名義の曲のスケッチ作りに同時に着手することはあっても、それ以上突っ込んだ作業はアルバムを作ると決めてから一気に取り掛かることにしている。手塚治虫は「ブラック・ジャック」「三つ目がとおる」「ブッダ」「ユニコ」「火の鳥」など、月に20近くの締切をこなしていたのだから正に超人だが、今の感覚からすると、頼む方も頼む方だと思う(笑)。
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2023年3月6日
ある専門家とたまたま職業の話になって、作曲をしているという話をしたら「作曲家は一番大変な仕事じゃないですか?それだけで25年も食べているなんて」とおっしゃった。そんな奇特なコメントをくれる人に会ったのは、それこそ作曲を生業にして以来初めてだと思う。他人に評価されたり認められることを期待した瞬間クリエイターは自滅するし、拒絶や無視、侮辱は朝飯前でなければ生きていけない。
Strasbourg / St. Denis - song and lyrics by Roy Hargrove | Spotify
2023年3月5日
2か月間の制作漬け生活から解放されたので、今日は晴天の中、3時間かけて散歩をした(といっても毎日ランニングやウォーキングはしているのだけど)。10代終わりから30代前半まではずっと車中心の生活で、ともするとコンビニすら車で出かける有様だったのに、歳を取るごとに歩行距離が伸びている。安藤忠雄さんは京都出身の学生達に「終電なんか気にせんと大阪から歩いて帰れ!」と叱咤していたらしいが、さすがにそれは鬼。でも笑える話。
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2023年3月4日
このところ流行していると言われるシティ・ポップやAORは、自分が若い頃に「馴染みすぎた」音楽ジャンルの一つだが、現在のアメリカのストリートやメディアから聞こえてくる音楽(殆どはラップ)とは感性に開きがありすぎて、ブームという実感が全然湧かない。と思っていたところに、「西海岸を追いかけた日本のポップス」を追いかけて地球を何周かした後に、数世代後の西海岸に漂着した、という感じのこの曲を聴いた。
Pacific Ave - song and lyrics by Pearl & The Oysters | Spotify
2023年3月3日
OEの新作『Compositions in Blue』のアートワークが完成しました。曲作りは毎回生みの苦しみがあるけど、全てのミックスダウン&マスタリングが終わってアートワークが完成すると、途中過程での葛藤が一気に報われた気分になります。3月末のリリースを目指して、これからディストリビューションの準備をします。今日紹介するのは、最近お気に入りの、英語ボキャブラリーを鍛えるパズルアプリ。
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2023年3月2日
個人的な見解だが、アートに「職人」という言葉を使うことに違和感がある。アートとクラフト(工芸)は重なるところはあれど、(優劣の問題ではなく)基本的に別物。アートは創り手のアイデアや視点、エモーションを作品に投影させる「自発的な挑戦」であって、リスクや恐怖と常に表裏一体。そこに秘めた危うさや飛躍、不安定さが、クライアントや指示の存在を暗に意味する「職人」という概念と必ずしもフィットしないように感じる。
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2023年3月1日
7年前に他界したフランスのミニマリスト、フランソワ・モルレ。彼に関する日本語の情報は少なく、以前ユニクロのTシャツのデザインに使用されたという話位しか出てこない。「私はモンドリアンに非常に恩恵を受けている。もし彼に感謝代を払ったら破産する位だよ」とのコメントが正直で笑えるが、もし彼のデザインにインスパイアされた現代のデザイナー達がモルレに感謝代を払ったら、彼はそれ以上のお金を取り戻せるかも(笑)
FRANÇOIS MORELLET — C'est n'importe quoi ? - YouTube