2025年03月31日
AIや機械学習の世界でサンプルデータの拡張/水増しをすることは常識のようになっているが、統計学的にも倫理的にも腹落ちしない場合がある。人間、つまりデータサイエンティストの主観やセンス、モラルが入る余地が大きすぎるような気がするのだ。学生ローン申請をサポートする米国のスタートアップがデータサイエンティストを雇い架空の学生400万人を捏造させたという事件は、極端な例だが上の「倫理的責任」を浮き彫りにしている。
2025年03月30日
現在新作の配信準備中で、米アグリゲーターのチェック(検品)を待っている。このプロセスで問題があって作業が滞った事はあまりないが、以前、全てのDark Modelのアートワークの左下に入れている「闇」という漢字のロゴをあちらのスタッフが勘違いして、「アートワークにQRコードを入れてはいけません!」と注意されたことがあった。こういう信じがたいヒューマンエラーが起こると、この手の事務・確認作業はもはやAIにお願いしたいなと思ったりする。
2025年03月29日
アメリカの食料事情を知ったお陰で、日本の状況についても考える機会が増えた。漁獲枠を巡ってしばしばニュースでも取り上げられるマグロ漁業についてのドキュメンタリーが放送されたというので、オンデマンドで見入っていたら、突然自分の曲(OE『Patterns of Passion』)が。耳に意識がジャンプしてしまってマグロが視界から消えた(笑)。音響効果担当の方、良質な番組で選曲して頂いてありがとうございます。
2025年03月28日
今でこそ「必要ない情報を排除していかに目の前の活動に集中できるか」、つまり「ゾーンに入る」ことが大事だと考えているが、若い頃は「瞬時に沢山の情報を処理し、状況判断ができること」が優秀さだと思っていた。入力する情報や判断を減らすことは「強み」になる。無知とシンプルは別物だけれど、知性がシンプルに考えることを妨げるのだとしたらそれは「弱み」でしかない。競争や多様性を問われる世界では、ハイコンテクストな「複雑さ」は足かせになる。
2025年03月27日
Guardianで傑作『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の凄まじく的外れな評論に対してコメントが沢山寄せられていたのだが、それらがとても的確で感心した。「カンフー&マルチバース!」みたいな触れ込みで見てしまうと、移民・離散体験と縁のない人には全然ピンと来ない、単なるドタバタ映画に見えるだろう。アジア人がアメリカで移民として生きていくこと自体が、目の前の現実を疑いたくなる位に混乱の連続で、既にマルチバース的なのです。
2025年03月26日
英語のポッドキャストを聴いていて、テキストで内容を確認したい時に文字起こしが必要になることがある。Adobe Premiere Proに「自動文字起こし機能」があると知って早速試してみたら、驚くほど正確にテキスト化してくれた。発音のリダクションが多いアメリカ人英語のリスニングにはある程度慣れているが、南部出身の人が「インセネフィ」と連呼するのが聞き取れなくて困ってたら、なんと”incentive fee”(インセンティブ・フィー)だった。
2025年03月25日
ふと興味が湧いてサイバーセキュリティの本を何冊か読んでいる。「フールプルーフ」というのは言わば「ポカ防止」、つまり誰かがミスをしても致命的な状態に進展しないような仕組みを設計すること。ただ、ヒューマンエラーというのは人間の想像を超えたとんでもない角度やレベルで起こる。ということを僕も少し前に思い知らされたが、最近のホワイトハウスは「フールプルーフ」ではなく「プルーフ・オブ・フールズ(愚か者達の証し)」と化してきた。
2025年03月24日
社会や組織のルールに従わないと制裁を受けたり反発にあうが、自分で作ったルールに関しては、それに従わなくても誰も困らないしすぐに何か悪いことが起こったりもしない。その分、自分の「鉄則」や「システム」を作り、それらに忠実でいるというのは訓練が要るし、実現が難しい。鉄則の作り方は学校では教えてくれないし、むしろ学校や社会はそんなものを各々に作られると困ると思っているかも知れない。なんて書いてたら、ふとこの曲がよぎった。
2025年03月23日
ダニエル・カーニマンの研究成果を礼賛し、話題にする人は日本にも多い。僕は人間の行動心理のパターンをさも誰にでも当てはまるかのように「〇〇理論」と名付け、知識として「お勉強」する風潮は、全然科学的ではない行為だと思っている。まず実験の再現性が低いことに加え、アメリカ人を被験者にした実験が日本人にもあてはまるかの検証を誰もしていない。こういう確証性の低い”理論”を「マーケティングの道具」として得意気に説くのは小賢しく、罪深い。
2025年03月22日
Findingsのランキングに時折懐かしい投稿がランクインしてくる。今から20年近く前の2006年に「1982年はエレクトロニック・ファンク豊作の年」だと書いた投稿が昨日5位に入っていた。自分で書いたのも忘れていたけど、確かに1982年はファンクだけでなく様々なジャンルから良い音楽が沢山生まれた年だった。僕はまだ中学生だったが、あの頃こういう音楽を聴いて踊っていた日本の大人達は今どうしているのだろう。
2025年03月21日
アルバム2枚分26曲のミックスダウンが終わりました。収録曲が2曲増えたので予定よりも数日延びましたが、かなり順調に作業出来たと思います。自分ための作品作りを最優先に取り組み、この10年で40枚近くのアルバムをModel Electronicからリリースしました。人生をさらに実りあるものにするために、今後は制作を続けつつ音楽以外の分野の勉強にも力を注ぎたいと思っています。
2025年03月20日
コンピューターやPro Toolsがロックをダメにしたという意見は昔からある。2000年前後、知り合いのアーティストがProToolsで仕上げた音源をマスタリングスタジオに持ち込んだら、ベテランのエンジニアが「何だ、Pro Toolsか」と音も聴かずに嫌悪感を示したというエピソードを思い出す。僕の場合、コンピューターやPro Toolsがなかったら現在の自分は100%存在しない。新しい技術は難癖をつけるよりも、付き合い方、使い方を考える方が得策。
2025年03月19日
昨日Googleが4.8兆円で買収を決めたスタートアップWizは、イスラエル国防軍の諜報部隊「ユニット8200」のOBが作ったサイバーセキュリティ会社。スタートアップといっても彼等は以前アダロムというテック会社をマイクロソフトにも売却した強者。地政学リスクが高まる中でイスラエル周辺の動きがますます重要かつ脅威となってきたことは明らかだが、国防、政治、経済、技術の各分野で国と企業の利害関係がスパゲッティのようにこんがらがってる。
2025年03月18日
日本にはエンターテインメントや娯楽はあるが、軍事力はさておき、資源、エネルギー、食糧、そして将来を担う人材が絶望的に足りない。日本国籍を持ち、長らくエンターテインメントの周縁にいる自分が、そんなことを考える頻度が増えた。僕らは人や国としての死活問題そっちのけで娯楽やカルチャーを謳歌しすぎていたのだろうか。皮肉なことに、僕らが多くを学び吸収してきた海外諸国は、そういった問題にもぬかりなく取り組んでいたのだった。
2025年03月17日
数多くの賞を獲得した映画『ブルータリスト』の監督は、実は1ドルもギャラをもらっていないという。これは周知の事実だが、スーパーボウルの出演料がゼロな事もよく話題に上る。僕はパスだけど、かつてはアーティストが売名や将来の大きなチャンスを期待して「プロモーション」という名の下に無償で仕事を引き受けるのは半ば常識だった。問題なのは、その見返り(ビジネスモデル)が消滅しつつあるのに、自らタダ働きを選択し続けていること。
'The Brutalist' director reveals he received 'zero dollars' for film
2025年03月16日
僕は人に比べて内耳が敏感らしく、聴覚過敏気味なのはまだ許容できるものの、気圧の変化に弱い。雨の多い多湿な季節や東南アジアのような温暖湿潤な気候、高山や高層マンションの様な海抜の高い場所では、この特性がマイナスに働くような気がする(検査はしていない)。気候的には西海岸やハワイが理想的だけど、米国で運転要らずのエリアは当然賑やかで騒音の問題が深刻。図太く生きてるつもりが、耳が繊細さんだった。
2025年03月15日
新曲24曲を並べて時間を測ったら75分前後に達したので、やはり2枚のアルバムに分けることに。ミックスダウンも佳境に差し掛かり、来週半ばには全てのマスターが仕上がる予定。名義はMERで、リリースはGW後と夏辺りを考えています。前作の『Cyber City Connection』は80年代中盤から90年代のエレクトロニックミュージックをイメージしたのに対し、今回は’78年から’82年頃(狭い)の雰囲気が詰まったファンク作品集になりそう。
2025年03月14日
ビバリーヒルズのロデオ・ドライブはまばゆいばかりの高級ブティックが立ち並ぶ街として有名だけど、ギャラリーも結構あって、一つ隣の通りにガゴシアン・ギャラリーがある。美術館とは違い、ギャラリーは作品を買う気がなくても、また買う財力がなくても、気軽にコンテンポラリー・アートを楽しめるのが魅力。ここで行われたキム・ゴードンのユニットBody/Headによるギターノイズ・パフォーマンスを見て、何かとても懐かしい気分に。
Body/Head: Thinking the Unthinkable | Sessions | Gagosian Premieres - YouTube
2025年03月13日
小学生の時最初に買ったアルバムはビリー・ジョエルの『ニューヨーク52番街』だった。彼は絶頂期を過ぎた頃、義理の弟でもあったマネージャーによる莫大な金額の詐欺に遭い、損害賠償訴訟を起こす。その後ライブ活動こそ再開したが、精神的な疲弊が尾を引き、独力による新曲が殆どない。マネジメントや管理という仕事はさも「らしく」聞こえるが、リスクを負わずして手数料で食う仲介業者が、本人の動機や愛着を超えることは絶対にない。
2025年03月12日
映画やアニメの音楽を専門的に作っている作曲家なら1日数十曲作ることは出来るかも知れないが、年中そのペースをキープすることは不可能だし、普通どこかで燃え尽きる(笑)。AIの力を借りて10万曲以上の曲を作り、さらにボットで一日66万回ストリーミング再生していた音楽家が逮捕されたというニュースがあったけど、曲作りのペースが異常なのはさておき、各ストリーミングサービスに流通させる手続きだけで気が遠くなりそう。
FBI arrest musician for streaming fraud and allegedly collecting $10million from AI-generated songs - NME
2025年03月11日
10年前に書いたこの記事は未だによく読まれているようだ。どの辺りに興味が持たれているのかは分からないけど、書いた内容については今も同感。先日書いた扁桃体を含めて、人間の脳は狩猟採集時代から殆ど変わっていない。我々は「獲物を生け捕り、敵から身を守り、群れて生きる」ために設計された脳のままでこの時代を生きているのだから、そもそも限界はある。AIの穏やかな知性と人間達の穏やかでない野性からそれを痛感する、2025年。
2025年03月10日
僕ら日本人の音楽リスナーの多くは数十年前から、故ボビー・コールドウェルが白人のアメリカ人であることを知っている。それが母国では状況が全く違っていて、YouTubeで彼の姿を見るまで黒人のR&B歌手だと思い込んでいた人が驚くほど多い。僕らが海外の文化を勉強しすぎてしまったのか、彼らが自分達の思い込みや先入観に自信を持ちすぎるのか。アメリカでは複雑な境遇だったが、日本に多くの理解者がいて良かったと思う。
2025年03月09日
映画『マネーボール』は出来の良い映画だと思うけど、人と選手の扱い方の点で、アメリカらしい「ドライさ」が心に引っかかる。2025年現在この手法(セイバーメトリクス)を徹底しようと思ったら、当然AIとデータサイエンティストの出番となる。ここから学ぶのは、人間(経営者、マネジャー、株主)>機械(AI、データ)>人間(選手、社員、クリエイター、ユーザー)の三層構造の「危機の夜明け」であって、美談でも他人事でもない。
2025年03月08日
人間は何かを見たり聞いたりしたとき、その情報の内容よりも、それが自身の命に関わるものかどうかを一瞬で判断する。その仕事を司っている脳の「扁桃体(爬虫類脳)」は、もちろん人間になくてはならないものだけれど、出来ればあまり活動してほしくない時がある。右扁桃体を切除した男性の記事を読んだところによると、「恐怖は思っていたより機械的。他の思考や感情よりも、腹痛や頭痛に近い」(記事は興味のある方だけどうぞ)。
2025年03月07日
知識や知恵は積極的に攻める上での「武器」にもなるし、自分を防衛する「盾」にもなる。無知は人を傷つけ世の中を混乱させる「凶器」と化し、最終的には自らを傷つける。ショッピングモールで凶器をちらつかせる人の行動を予測することは不可能だし、彼の真意を深読みしても無駄。ターゲットから十分に距離をあけて危険を避け、冷静さを保つことが大事だけれど、いつの時代もメディアはモールの実況中継で人々の混乱とパニックを煽る。
トマス・ペイン『Ignorance is of a peculiar nature; once dispelled, it is impossible to reestablish it』
2025年03月06日
2025年2月分のマイクロブログ・アーカイブをアップしました。お楽しみ下さい!先月は、民主主義からカルチャーまで、世界中すさまじい勢いで進む「エンシティフィケイション」と、アルゴリズムやテクノロジーを盲信することの弊害について考えることが多い月でした。「難儀な時代になったものだ」というセリフは恐らく古代から使われていると思うけど、この難儀な時代と社会に屈せず、どう実りある人生を生きるかを考えながら毎日腕立て伏せをし、歩いてます。
2025年03月06日
しばらくチェックしていない間に、ストック素材サービスのFreepikが驚くほど進化していた。AIを使って今や静止画から動画を作り出し、ナレーションをリップシンクしてくれる。他のストック素材サービスもAIブームに便乗して競争が激化しているが、北欧のPEファンドが買収した5年前辺りからのFreepikはもはや別物。それはともかく、この手のサービスを解説しているYoutuberが皆、実在しない「AI人間」に見えてくる(笑)。
CANCEL Runway & Kling AI! This AI Video Generator does it all - Freepik AI
2025年03月05日
新作用の楽曲制作が折り返し地点に来ました。20曲以上あるけど、一つのコンセプトに基づいて作ったので1枚のアルバムとしてまとめた方が良さそうな予感。沢山のアイデアを同時進行で「寝かせておく(sleep on
」のは好きだけど、「先延ばし(procrastinate
」にするのは苦手。先日テレビである学者が「実行は少し先延ばしにした方が上手く行く」って言っていたが、それは組織や業界、人種によって反応と結果が随分違うと思う。
2025年03月04日
平均寿命の国別、県別ランキングの記事をよく目にするが、平均寿命というのは亡くなった方の死亡年齢の平均を取ったわけではなく、あくまでも「その年に誕生した人の”平均余命”」を言う。いずれにせよ標準偏差が小さすぎて、県別に小数点2桁レベルでランク付けして話題にするのは弊害の方が大きい。それよりも平均寿命か「不健康な期間」を差し引いた「健康寿命」に関心がある。ああ、これもまた微小な違いをランク付けしちゃってるのか…。
2025年03月03日
「海外の人は仕事のメールの返信が遅い」という意見があった。海外と言っても超千差万別だから一般化は禁物だが、総じてアメリカ人は日本人より全然速い。あと「複数の質問やお願いを箇条書きで書いても、全てに答えてくれない」という不満も見かけたが、これは当たり前。日本人同士以外では、メールに用件を盛り込めば盛り込むほど返信率と質が下がる。一通一件に絞り数行にまとめて、願い事はタイトルにねじ込む(笑)のが鉄則。
2025年03月02日
「人生の無意味さに気付けば、人は生きる意味を創り出さざるを得なくなる」と言ったのはスタンリー・キューブリック。僕は彼の作品のファンではないけれど、折に触れてこの言葉を思い出す。正確には、人生が無意味というよりも、(万能だと勘違いしがちな)「人間」という存在に無意味さや限界を感じることがある(笑)。でも僕はニーチェ気取りの虚無主義者やひねくれ屋ではなくて、かなりストレートな熱血漢です。
2025年03月01日
久々に映画『Big Short』を見た。クリスチャン・ベール演じる主人公マイケル・バーリーは健在で、今でもよく話題になる。彼は仮想通貨からAI株まで加熱気味の状況を睨みつつ「間もなくマーケットはクラッシュする」と警鐘を鳴らすが、長い間経済は彼の考察とは裏腹に膨張しまくっている。彼の見方には賛成だけど、世の中はあるべき方向には動かない。ただし、「なかなか」。