日々のつれづれと、その日のお気に入りを紹介するマイクロブログ『Day By Day』を月別にまとめたページです。今回は2024年6月分を紹介。最新の投稿は https://www.tatsuyaoe.com/microblog/ にて。
2024年6月30日
2005年頃だったか、フィリップ・グラス氏の作品の宣伝資料に推薦コメントを書かせて頂いたことがある。来日公演後のパーティーにもお呼び頂いたのだが、各業界のベテランっぽい方々が既に彼を取り囲んでいて、当時若輩者の僕は割り込んで挨拶するのは気が引けた。彼の自伝(翻訳が良い)を読みながら、そんなナイーブだった自分を思い出し独笑。
フィリップ・グラス自伝 音楽のない言葉 | ヤマハの楽譜出版
2024年6月29日
中国のストリーミングサービス、ネットイース(網易)でのDark Model『Judgment Day』の再生回数が、昨年末時点で420万回を超えていた。愛聴して下さっている方々には感謝の一言に尽きます。この曲はTik Tokでもよく聴かれて(使われて?)いるようで、ありがたい限り。時間をかけて、どこからともなく音が風のように伝わっていく。これこそ音楽の醍醐味。
[更新] Dark Model『Judgment Day』が中国のNetEase Cloud Musicで420万再生を達成
2024年6月28日
「ポピュラーミュージックの質が下がった」という不満をよく耳にする。僕はメインストリームでヒット曲と言われている類のものは接点がないから、自分が好きな音楽に出会えて、聴ける限りは何の不満もない。彼らは暗に「リスナーの耳と音楽業界の質が低下した」と言いたいのかも知れないけど、過去への思い入れや「べき」論に囚われると、進歩や発見のチャンスを自ら逃してしまう。
The Real Reason Why Music Is Getting Worse - YouTube
2024年6月27日
Grammarlyという英文校正ツールを有料で使い始めて十数年になるが、この数年AIを使った機能の向上が目覚ましい。自分が書いた文章がストレートすぎる場合、ネイティブらしい小慣れた言い回しや言葉上の「気遣い」を提案してくれるのだが、そのアドバイスがかなり的確。もちろん、AIの濫用には警戒が必要だし、校正前の文章の精度を上げるのは人間側の仕事。
Words That Work | Communicate Clearly With Grammarly - YouTube
2024年6月26日
僕がプロを目指して作曲や音楽制作を開始したのは20代後半だから相当遅いけど、中学生の頃にシンセやエレキギターに触れ、宅録やバンド活動っぽい事は多少やっていたから、大人になるまで音楽活動に全く縁がなかった訳ではない。イヴァン・リンスがピアノを始めたのは18歳の時だというのは驚き。
Ivan Lins: "DINORAH, DINORAH" | Frankfurt Radio Big Band - YouTube
2024年6月25日
「愚者は自分の経験から学び、賢者は他人の経験から学ぶ」と言ったのはドイツの宰相ビスマルクだという説が流布しているが、具体的な出典や証拠はない。確かに歴史や他人の経験から学べることは沢山ある反面、自分で経験して失敗しないとその切実さは学べない。学ぶ人に愚者はいないし、学び方に優劣などないと思う。
Experiential Learning: How We All Learn Naturally - YouTube
2024年6月24日
現代アートは「作文(もしくは頓知)ゲーム」だと思う。アーティストの作文(作品説明)をギャラリー、キュレーター、評論家ら共謀者が壮大な物語へと育て上げ、その「芸術的価値」と価格を高める。この本で落語家の父親の影響や、一休やデュシャンへの敬愛ぶりを知り、杉本博司さんが天才的に作文が上手いことに合点が行った。
『杉本博司自伝 影老日記』| Amazon.co.jp
2024年6月23日
「フィンガープリント技術によって、あなた(アカウント名Model Electronic)の曲はModel Electronicに著作権があることが判明しました。あなたがアップする資格があることを証明する書類を提出して下さい。」Vimeoからこんな催促が。「アルゴリズムの欠陥や機転の効かなさを我々人間が尻拭いし、時間を浪費するのは馬鹿げている」と率直に伝えたら、普通に理解してくれた。
AIが損害をもたらした場合、悪いのは誰か?| ハインリヒ・ベル財団
2024年6月22日
ニュースのコメント欄やSNSなどでは、世間の出来事を全部自分事として捉える風潮があるけれど、自分と直接関係のないことに逐一反応していると、本当に大事な判断を正確に行うための落ち着きとエネルギーを使い果たしてしまう。過度の「内面化(internalization)」をやめて、必要以上に当事者意識を持たないように努めることはストレスフリーへの第一歩。
How I Learned to Stop Internalizing Everything | Medium
2024年6月21日
『カウンターカルチャーからサイバーカルチャーへ』という本(邦訳はなし)の著者フレッド・ターナー氏がインタビューの中で、「デザイナーとして有名なあのイームズ夫妻は、実はサイバネティクスに関する映画を作っているんですよ」と話していたので調べてみた。初期のコミュニケーション理論やコンピューターサイエンスを扱った驚くほど学際的な内容で、めっちゃ古い映像なのに、なぜかやる気が出た。
"A Communications Primer," by Charles & Ray Eames (1953) - YouTube
2024年6月20日
先日配信を開始したOE『Early Techno Works 9697』はもう楽しんでもらえましたか?収録曲の「Across the Ocean」のフル試聴トラックをSoundCloudにアップしたので、そちらも併せてお楽しみ下さい。次のリリースは新曲のみを収録した、OE名義のニューアルバムです。8月上旬配信を予定しているので、引き続きお楽しみに。
OE - Across The Ocean (from "Early Techno Works 9697") on SoundCloud
2024年6月19日
インディ音楽サイトPitchforkが瀬戸際に瀕していると聞く。大手出版社に身売りした時点で、彼らの運営能力と信念には疑問を感じたので、今更驚きはない。彼らの悪意と偏見に満ちた、時に偽名のレビューでキャリアが吹き飛んだアーティストもいるが、Nine Inch NailsやFlaming Lipsらは今日も音楽と向かい合っている。僕が信じるのは、そういった「屈しない、動じない実行者」だ。
Pitchfork lived and died by the internet - The Verge
2024年6月18日
ナシム・ニコラス・タレブが「珍しく地に足の着いたファイナンス本」として薦めていた『What I Learned Losing a Million Dollars』のオーディオブックを聴く。投機で天国と地獄を味わった著者が力説するのは、「何事も上手く行った時、それを自分の才能や賢さ、努力のおかげだと正当化しない」こと。単にラッキーだったのだと考えられるなら、努力と慎重さを忘れずに済む。
What I Learned Losing a Million Dollars - Jim Paul, Brendan Moynihan | Amazon.co.jp
2024年6月17日
この5年位だろうか、ネットで検索して出てくる情報の信憑性と質がかなり低下しているように感じる。各社の検索サービスの向上が頭打ちにあることも原因の一つだろうし、かといってAIチャットで得られる情報も、まだ補助的なレベルでしかない。その中にあって、最近「揺るぎない事実」に出会って愕然としたことがある。それは磯野波平が自分と同じ年だったこと(笑)。
磯野家の波平・フネ夫妻と比べれば実感できる 自身の「若さ」
2024年6月16日
近年評価が高まっている版画家、川瀬巴水の魅力を広めたのは、ドイツ系米国人のロバート・ミュラーだった。学生の頃偶然出会った巴水の作品に魅せられ、小遣いをはたいて買い集めたが、その後真珠湾攻撃が勃発した際、(日本に反感を持つ米国人に破壊されないよう)作品を全て倉庫に隠した。我々が川瀬の美に触れることが出来るのも、一人の「物好き」の執念のお陰。
Kawase Hasui: A collection of 671 etchings (HD) - YouTube
2024年6月15日
バンクシーのドキュメンタリー『Banksy and the Rise of Outlaw Art』の冒頭で、80年代のNYのグラフィティ・カルチャーが詳しく紹介されていた。昔『Wild Style』のVHSを買って繰り返し見たことを思い出す。NYのストリートカルチャーがどうUKのブリストルに飛び火したのか、その経緯を、今思えば随分平和ボケしていた(笑)当時の自分と重ね合わせて振り返ってみる。
Massive Attack - Be Thankful For What You've Got
2024年6月14日
Procrastination(先延ばし)の反対の意味としてprecrastination(先手先手で早くやり終えること)が使われ始めたのはつい最近。「先延ばしは良くない」のは当然ながら、あまり早くやりすぎるのも問題だという主張をよく見かける。拙速すぎて失敗することは確かにあるけれど、「やり直す時間やチャンスをより多く確保できる」という点で、個人的にはやはり「先延ばし派」より断然良いと思う。
Are you a precrastinator? The opposite of procrastinating has its downsides | The Guardian
2024年6月13日
Books Ngram Viewerというツールを使うと、Googleがデジタル化した書籍データの中で、ある単語や表現がどの程度の頻度で出現したかを時系列グラフで確認することができる。大雑把にではあるが、英単語やイディオム、そして話題のトレンドを探るのに役立つ。そこで”Japan”と打ってみたら、1991年以降の使用頻度のガタ落ちぶりに愕然。みんな、頑張ろう。
2024年6月12日
フランクリン・ルーズヴェルトの妻エレノアの残した言葉に「イエスと言う権限のない人に、ノーを言わせてはならない」というのがある。確かに、自分の頭で考えないでノーだけを機械的に振りかざす輩は多いが、一番良いのは「他人からイエスをもらうことを期待しないで、とにかくやる」ことだと思う。事を成し遂げるのに必要なのは自分の内なる声であって、誰のイエスでもノーでもない。
エレノア・ルーズベルトが教える、他人に否定されても負けない方法 - YouTube
2024年6月11日
夜聴きの一枚として推薦できるのが、Floating Points & Pharoah Sandersの『Promises』。このコンセプトで故ファラオ・サンダースと組むなんて小賢しいぞ(=悪いはずがない)と突っ込みたくなる出来(笑)。この作品を聴いていると、以前大友良英さんのグループONJQと一緒にアルバムを制作させて頂いた頃を思い出すが、あれからもう20年経つとは。
Floating Points, Pharoah Sanders & The London Symphony Orchestra - Promises [Movement 1] - YouTube
2024年6月10日
大宅壮一氏は「ピカソやマチスは弟子に代稽古させたり免状を与えたりしない!」と、当時栄華を極めた生け花の家元制度を痛烈に批判したとか。生け花を芸術的な存在に引き上げた功績は大きいと思う反面、僕が全く興味が湧かない「偉い」とか「ありがたい」のヒエラルキー/権威作りに関しては、これこそが古代から続く日本のお家芸だから、今更どうこう言う気にも。
『華日記 昭和生け花戦国史』| Amazon.co.jp
2024年6月9日
「Youtubeのアルゴリズムによる推薦システムには問題があるか?」とCopilot(AI)に聞いたら、「なぜユーザーにその映像が推薦されたのか等、アルゴリズムがどう作用しているかについての透明性が低い」とAIが言う(笑)。これこそ一部の有識者が長らく警鐘を鳴らしている問題で、「AIを取り巻く将来は素晴らしい!と説くなら、なぜその仕組みを隠そうとするんだ?」
It’s high time for more AI transparency | MIT Technology Review
2024年6月8日
ジョージ・レナード『Mastery』のオーディオブックを聴いた。達人になれない3つのタイプは「Dabbler(移り気で長続きしない)」「Obsessive(ガムシャラ過ぎて燃え尽き)」「Hacker(要領やコツで乗り切ろうとする)」とのこと。結果ばかりを追い求める「ゴール志向」ではなく、上達が止まる停滞期(プラトー)と上手く付き合い、楽しむ「プロセス志向」が大事なようだ。
Mastery by George Leonard - Audiobooks on Amazon.co.jp
2024年6月7日
小旅行に出て、二日間で4万歩歩いた。毎日1万歩以上は歩いているから平気ではあったけれど、これ以上歩くと膝を痛めたりしかねないので、自分的にはこれが上限といったところ。以前ジャンパー膝(膝蓋腱炎)に悩まされた時、運動しないことの弊害よりも、運動しすぎることの弊害の方が、取り返しがつかなくなる可能性があるという点で深刻だと学んだ。
24時間で10万歩チャレンジ - Youtube
2024年6月6日
空き時間にセネカの書簡集を読む。語弊のある表現だが、自分が書いたのかと思うほどに(笑)自分の人生観にフィットする部分もあれば、時折ただの辛辣なボヤキに聞こえる部分もあって、とても興味深い。日本ではかつて、セネカの著書は『論語』に近い道徳論だと捉えられたためにあまり読まれなかったと聞くが、僕には全く別物の「ザ・西洋哲学」に映る。
生の短さについて 他二篇/大西 英文 岩波文庫
2024年6月4日
機械学習(AI)の専門家として知られる女性コンピューターサイエンティスト、チップ・フエン氏のブログに興味深い記事が載っていた。「3年から6年おきに、”新しい人間になる”ことを目指す」「現在自分が取り組んでいることは、将来の”オプション(選択権)”を最大化させるためにある」という成長の捉え方は、自分の考えに近くて非常にしっくり来る。
Measuring personal growth
2024年6月3日
次の作品のミックスダウンがほぼ終わりました。タイトルはもう数日検討するとして、収録曲の曲名は全て決定しました。『Compositions in Blue』の延長上にありつつ、今回は躍動感のある曲が増えているかなと思います。今週金曜日は『Early Techno Works 9697』のリリースなので、まずはそちらをお楽しみ下さい!
OE『Early Techno Works 9697』2024年6月7日リリース
2024年6月2日
その昔、ロンドンのTurnmillsというクラブに呼ばれた時の話。テクノハウス箱で鍛えられ、当時全ての時代・ジャンルのレコードをロングミックスする(繋ぐ)のが当たり前だと思っていた僕は、据え付けられたDJミキサーがEQがついていないヒップホップ(カットイン)向けのものだったのに仰天した。「EQ付きのミキサーないの?」とスタッフに聞いたら、「あるわけないでしょ」(笑)。
Gemini MX-2200 mixer Ltd Edition White - YouTube
2024年6月1日
「未来を予測する最善の方法は、未来を創ることだ」と言ったのがエイブラハム・リンカーンだという説は、信憑性が低いらしい。ノーベル物理学者のガーボル・デーネシュは自分の著書で実際に「未来は予測できないが、発明することはできる」と書いた。僕はおめでたい人間だから(笑)、未来はもちろん、過去も「創る=捉え直して未来に活かす」ことが出来ると思っている。
FACT CHECK: Did Abraham Lincoln Say, ‘The Best Way To Predict The Future Is To Create It’?