自分の会社・レーベルであるModel Electronicのサイトを更新しています。音楽レーベルであれ何であれ、会社や事業体はブランディングやイメージ作りよりも、「誰に対して何を語っているのか」をしっかりと意識して「相手(顧客・バイヤー)の立場に立って考え、書く」ことが最優先されるべきなのですが、言うは易し、これが意外と難しいのですね…。
「相手の立場に立って考え、書く」という、基本の難しさ
日々の仕事と並行して、この一週間ほど自分の会社・レーベルであるModel Electronicのサイトの今後の方向性と内容について考えています。何を目的とするのか(What)は定まっているのですが、どう伝えていくか、どうコミュニケーションを取っていくか(How)についてもっと練らなくてはいけないなと思っていたので、国内外含めて様々なサイトを見たり、本を読みながら研究していました。
購入したのはもう2年ほど前になりますが、このところじっくり読み返している本で、 David Meerman Scott(デイヴィッド・ミーアマン・スコット)のThe New Rules of Marketing & PR” というものがあります。この本では企業(に限りませんが)がウェブを使ってどのように顧客/バイヤーとコミュニケーションを取っていくべきか、マーケティング/PRの一環としてどうウェブを役立てていくべきかについて、非常に分かりやすく、説得力のある形で書かれているのですが、この本で一貫して主張されている「相手(顧客・バイヤー)の立場に立って考え、書く」という至極真っ当な事を形として実行するのがいかに難しいかについて、繰り返し読めば読むほど痛感させられます。
今回は特に海外の音楽・メディア関連の企業のウェブサイトを色々リサーチしていたのですが、ある程度実績があり今更特に新規顧客の開拓を行う必要のない会社はまだしも、新規開拓が必須となるスタートアップ企業や比較的小規模な会社でも、「どう顧客のことを考え、取り組んでいるのか」という最も大事な部分が抜け落ちているものが数多く見受けられました。まず会社理念の説明の中に”You”という言葉なり、そのサイトを訪問した人間(≒潜在顧客)と自分の会社の関係の話が全然出てこない(笑)。
特に英国の会社によく見られた傾向ですが、立ち上げて間もないのに(から?)自惚れが過ぎる会社とか(スタッフの「絶対無人島に持って行きたくないダサイ曲」リストなんて挙げているCM音楽エージェント会社もあった。でも業務内容からして、自分の趣味の良さを披露することが第一じゃないよね?)、挙げ句の果てには “About Us”のところに「俺達が誰かって?誰がそんな事知りたがるもんか!」みたいな刺々しいことを書いている絶句ものの会社(恐らく自分ではそれがクールだと思いたいのでしょうが)とか、内輪はまだしも外部の人間が仕事の依頼のコンタクトを取るにはどう考えても抵抗を覚える作りになっているものがありました。誰を相手に、いや何でサイト作ってるんだろう(爆)。
この手の「自惚れ系」は音楽関係に限らずクリエイティブな業種の企業サイトに非常に多いケースですが、例えばIT企業では”グラ(ウ)ンドブレイキング”, “スケーラブル”, “サスティナビリティ” とか抽象的な(実体の伝わらない)言葉(しばしば”Jargon” と呼ばれます)でケムに巻くことも多く、どの業種にもそれ特有のクセというか悪しき傾向があるものだと思います。上のDavid Meerman の本ではこれを “Gobbledygook” と呼び、彼のブログでも頻繁にこの話題について採り上げていますが、これらケムに巻く言葉使いを出来るだけ抑えて顧客・読み手の視点で書くというのは結構難しい。自分の伝えたいことが本当に自分で理解できていない限り、もしくは自分なりの思い・解釈がこもっていない限り、平易な言葉で書くことは出来ないからです(その点では国内の地方にある中小企業や店舗のウェブサイトなどは、遥かに誠実で顧客目線で書かれたものが多くて参考になりますね)。
「誰に対して何を語っているのか」を見失わないこと
僕は上に(悪しき)事例を挙げた企業の取引先ではありませんから、上の様なウェブサイトでのただずまいが仕事にどういう結果をもたらすのであれ別に構いませんが(笑)、要は「人の振り見て我が振り直す」のみです。ブランディングやイメージ作りもとても大事ですが、「誰に対して何を語っているのか」を意識した内容にすることはそれ以上にずっと大事。そしてそれらの要素は決して相反しないはずです。今後それらの事にさらに留意して、Model Electronic その他のサイト作りを行っていきたいと思います。
Model Electronicのウェブサイトで、広告と音楽に関するブログを書きました。MEのブログは業務内容に沿ったテーマに絞り込んで書いていきますが、ご興味ありましたらお立ち寄り下さい。
どうやって問題を解くか: 広告の中の音楽 -前書き-(英語版)
最後に、最近発見して気に入ったNike “Pro Combat” のCMを紹介しておきます。音がストーリーとブランドをシンプルかつ印象的に語っています。