このところの豪雨に見舞われている地域にお住まいの方もいらっしゃると思いますが、ご無事でしょうか?今年は本当に自然の猛威に見舞われている年ですね。自分を含め、日本は今まさに一人一人の生き抜く精神力をも試されているのだと感じています。ご不幸や災難に遭われた方々を偲びつつ、命ある我々はそのありがたみを噛みしめ、力の限りタフに生きていきましょう。
今週は今年に入ってからずっと寝かせていた曲のアレンジを完成させました。僕の場合、一旦完成した後のバージョンアップ、リアレンジというのは頻繁に行うのですが、今回のリアレンジには特別時間を要しました。少し技術的な話になりますが、完成したバージョンはトラック数が100近くあり、やはりそれだけトラック数が増えると選択肢や調整しなければならない要素が膨大になり、まとめるのに手こずります。創作に限らず仕事は出来るだけシンプルに行いたい主義だけれども、スケールの大きな楽曲を作る際にはなかなかそれが守れません。もちろんフルオーケストラを再現するようなスコアミュージックやCG(コンピュータ・グラフィクス)の世界などに比べればまだまだシンプルなんですけどね。
今日紹介するのはその完成した楽曲とは違う楽曲”Fire Back” ですが、これも割とスケールの大きなトラックだと思います。この手のパーカッショントラックは音の一つ一つの選び方とグルーヴの作り方で相当印象が変わってくるので、市場に出回っているソフトや素材に頼りすぎず、出来るだけ自分で音を作ってマニュアルに演奏してみるようにしています。
時代の流れは読みつつも、出来るだけ自分の環境を便利(快適、楽)にしないこと。最初の話に戻るようですが、これは自分をタフであり続けさせるためには案外大事なことではないでしょうか。一つの便利さがもう一つの不便さ(制御しずらさ、後戻りしずらさ)を生む、そんなことを考える今日この頃です。
最後に、僕の尊敬するダイソン社の創業者James Dyson(ジェームズ・ダイソン)氏のインタビュー映像を紹介しておきます。インタビューの中で彼が話していたトーマス・エジソンについてのエピソードが印象的でした。エジソンは試作品作る際に、「1試作品につき1つの改変だけ」を行うことをルールにして作業していたということです。なぜなら改変が1つだけなら、それが改善なのか失敗なのか、またその原因もはっきり分かるから。そしてその「改変→フィードバック」の作業を数えきれないほど繰り返して行き、正解まで追い込んでいく。
気の遠くなるような話ですが、ジェームズ氏が自身の著書「逆風野郎」で回顧している、何千個もの試作品を作ったと言われるGフォース型サイクロンの開発ストーリーも、このエジソンのアプローチに酷似していました。読んでいて痛々しい気分になる程に、壮絶なエピソードの連続が収録されています。ちょっと、安藤百福さんのチキンラーメン誕生秘話を思い出したりして…。
真実というものは本来まとまりが悪く泥臭いものですが、それを包み隠さず真摯に綴っている本に出会える事はめったにないという点で、お薦めです。