現在ゴールデンウィークの最中なので、皆さん旅行などされているかも知れませんね。僕は相変わらず暦とリンクしないサイクルで仕事をしているので、先週末東京の関係先に送ったメールの返事の自動返信を見てはじめてGWに突入していたと気付いた次第です(笑)。それはさておき、まずは先週末から取り掛かっていた Dark Model “Revenge Seeker” の完全バージョンが仕上がったのでそちらの披露と、Bandcamp の方で今日からDark Modelの楽曲販売を開始したことのお知らせから始めます。
Dark Model 「Revenge Seeker」完全版
この曲の最初のバージョンは約1年前にDark Modelのプロジェクトを始めた時に紹介しましたが、その後このプロジェクトのアイデアや方向性が自分なりにより明確になってきたので、今回その集約版としてアレンジを加筆・修正した次第です。
この曲のミックスが終わり、現在次の新曲の制作に取り掛かっています。Dark Modelに関しては今後さらに自分のクリエイティブの箍(タガ)を外していきたいと思っているので何が出てくるかお楽しみにといったところですが、ひとまず10前後の楽曲が仕上がってきたので、Bandcamp にてこれまでの作品の販売を開始しました。リリースはフルアルバムが完成した時に一気にiTunesやAmazonで、というトラディショナルなやり方もあるでしょうが、自分の現在の活動方針や展望、またリスナーの音楽への接し方の変化などから鑑みて、まずはタイミング良く、テンポ良く皆さんに聴いてもらった方を優先すべきだと思いました。Dark Modelのこれまでの代表的な楽曲を揃えてありますので、下記のURLを覗いてみて下さい。
https://darkmodel.bandcamp.com/
現在「アルバム」という形態に残されている意味は?
アルバムと言えば、2013年現在「アルバム」と言われる形態にどういった意味が残されているのだろうと考えを巡らしていた頃、アメリカではよく知られている名物ブロガーBob Lefsetz(ボブ・レフセッツ)が折しも「The Album」というタイトルでコラムを書いていました。僕自身は彼のここでの意見を全くラディカルだとは思わないが、僕が日頃仕事をしている経験から得られる見解として、日本とアメリカでは2013年現在、音楽産業(と周辺の産業構造)/マーケット/リスナーの嗜好性・消費の仕方は全くと言っていいほど状況が違い、両者を繋ぐ接点・類似点は殆どないので、少し極端に映るかも知れません。それを前提に読んでみて下さい。
Lefsetz Letter “The Album” http://lefsetz.com/wordpress/index.php/archives/2013/01/07/the-album-2/
彼の意見の印象深い部分に脚色を入れて(笑)かいつまむと「パブリシティや既に終わりつつある商慣習のためだけに、殆どのリスナーが望みもしない長尺の「アルバム」という過去の形態にアーティストが縛られる理由がどこにあるのか?サージェント・ペパーズの様なストーリー性のあるアルバムを作りたいかスーパースターでもない限り、アーティストは過去の産業の枠組みをフォローするのではなく、今のリスナーと対峙して新しい「熱」を創り出すこと、一歩先んじてその他大勢とは違うやり方を実践することに知恵を絞れ。」という趣旨の内容です。
音楽で「ストーリー」を表現するということ
以前もこのFindingsで書いたように、僕はこの、音楽の「ストーリー性」という事にはキャリアを始めた当初から強く興味を持っています。「時間芸術」とまでは言わなくとも、音楽も映画と同じく時間軸に根差した表現物である以上、3分のシングルであれアルバムであれ、果てはDJミックスであれ、「時間を演出・コントロールする」という「ヨコの動き(仕事)」は、音階、和声、音質、音圧といった「タテの動き(仕事)」と並んで、もしくはそれ以上に音楽にとって大事な要素だと考えています。ただ、それを常に80分弱の「CDに収録できる時間尺」という「器」から発想することの意味は、(CDリリースが前提条件でない場合においては)既に殆どないし、レコードにしろCDにしろ「器から来るフォーマット=物理的制約」から作り手も聴き手も解放されたことは、我々がテクノロジーから受けた弊害ではなく「恩恵」の一つだとポジティブに捉えるべきなのかも知れません(時計を逆回しに出来ない以上は)。
作り手も受け手も、音楽に対する時間軸の設定や楽しみ方がより自由になった現在、そこを「実際には存在しない器」をお互い想定して堅苦しい思いをしながら60~80分弱を過ごしてもらうことを期待するよりも、もっと本質的・根源的で有意義な「音楽と時間」を提供することに知恵を絞りたい、というのが僕の考えです。前掲のレフセッツは同じような事をリスナー(消費者)の立場に力点を置いて、若干扇動的に(それが彼の存在価値だから)書いているのだと思います(注:ただこの物言いは、リリースに関して自由裁量権を持っている一部のインディペンデントなアーティストやレーベルにしか通用しないのはアメリカも日本も同じでしょう。契約がぐらついて絨毯爆撃プロモーションのチャンスを失う恐怖に比べれば、古い商慣習や桎梏に服従する事くらい大したことではない、というのが概ね現実だと思います)。
もちろんCDの形態でリリースする機会があればその時間軸でコンセプトから曲順まで考えるでしょうし、90分セットのDJならその中で(オーディエンスの反応を見ながら)選曲と組み立て、ミキサーの使い方を考えるでしょう。Dark Modelに関しては物語性を意識したプロジェクトであることもあり、最初から1曲1曲に完結したストーリーを込めて作っているので、それを繋げて80分の「エレクトロニック・オペラ」にする面白さはまだ残されているだろうと思うと同時に(”Songs of the Siren”が正にそうでした)、その手法を採らなくてもまずは単曲で十分こちらの意図は伝わるはずだと考えている次第です。