引き続きDark Modelのニューアルバム「Saga」についての解説です。Vol.1、Vol.2、Vol.4も併せてお読み下さい。
今回のアルバムでは、当初から「(自分の家紋をベースに)Dark Modelのシンボルを作る」というアイデアを持っていました。皆さんもよくご存知のように、封建時代、家紋は個人もしくは家族のアイデンティティとして、平時だけでなく戦時も使用されました。当時の日本人にとって家紋は、血統、ルーツ、信条などを含めた家族の絆をより強固にし、その威厳や強さ、あるいは一家の「覚悟」を外に対して示す、最も分かりやすく効果的な手段だったと言えるでしょう。そういった意味合いを持つ家紋にインスパイアされたシンボルを使用することが、Dark Model(もしくは僕自身)のアーティストとしてのアイデンティを示すだけでなく、このアルバムのテーマ「聖戦」を象徴することにもなると考えました。
そういった考えの下で、大江氏の家紋(毛利家と同じ「一文字に三つ星」。非常にシンプルで力強いデザインです)をヒントにしてイメージを膨らませながら原型を作り、デザインチームがそれをさらに変形・発展させてモダンなシンボルに仕上げました。金色の部分は兜のいわゆる「鍬形(くわがた)」ですが、通常はハート型(これを猪目というらしいです)や上に開く形で放物線状になっているところを、丸でくり抜いたような形にしてあります(この丸は大江氏の家紋にある三つ星の丸をヒントにしています)。そしてこの鍬形を一定の角度で回転させたものが後方にあるメタリック・ブラックの部分です。
家紋というのは基本的に平面(二次元)的なデザインですが、神社やお寺などの建造物にある社紋・寺紋・神紋などの中には立体的なデザインのものも見受けられます(例えば柱や賽銭箱に固定されているもの)。また、西洋や中国では、家の門にライオン・獅子型のドアノッカーをつけたものがありますよね?ああいった立体感のある紋をイメージしています。
実はこのアートワーク、最初は実物の家紋を作ってそれを写真に撮ろうかなんて、無謀な事を考えていたんです。僕の方で簡単なCADソフトでラフを作ってみたりと数日密かに試行錯誤をしてみたのですが、デザインチームと話し合ってそれがクオリティ的にあまり良い結果を生みそうにないということが分かったので、今回は見送りました。今となっては暴走して3Dプリンターを買わなくて良かったななんて思っています(笑)。
平時はもちろんのこと、闘いの時、つまり「のっぴきならない事態」の時に自分が守るべきもの、外に示すべきものは何か?日本の封建時代はそれが「家族(血族)」であり「家紋」であるということを教えてくれているように思うのです。次回はこの「血」と「信念」を持つ闘いということについて、西洋社会と日本との捉え方の違いなど、少し突っ込んだ考察を含めてお話していきたいと思います。