海外でオンエアされることを前提としたCMや映像に音楽を提供する際に気を付けていることについて。日本の文化は「ハイコンテクスト」と言われます。やみくもなグローバル志向は考え物ですが、我々の言語・文化は「暗号」に映ることもあるという自覚を持って取り組む必要もありそうです。
楽曲提供をしたCM映像を紹介した「Commercial Reel」ページを作りました
現在ライブの準備と引き続きModel Electronicウェブサイトの作りこみをしています。加えて、僕がここ4,5年の間に参加させて頂いたCM作品の一部を紹介した“Commercial Reel”のページを作りました。ご興味ある方は是非お立ち寄り下さい。
広告作品はタイアップなどの仕込みでも絡まない限り、作曲者のクレジットが載る事はありませんが(主役は商品とメッセージなのですから当然そうあるべきだと思います)、音楽は広告においても非常に重要な要素を占めている上、通常の商業音楽と違って、商品やブランドのメッセージに対するディレクターや作曲者なりの解釈・翻訳が表現に明確に現れています(そうでない広告も実際には多いかも知れませんが、自分はそういう姿勢に基づいて取り組んでいます)。
単に映像に相応しい音をつけるとか斬新さ、スタイリッシュさをアピールするのではなく、メッセージ訴求に貢献もしくはそれを促進させる(=絵に合わせる以前にメッセージに音を合わせる)ことを目的としてサウンドデザインや作曲を行っているということを理解して頂くには、やはり音を併せて聴いて頂くのが一番良いと思いましたので、今回幾つか紹介させて頂いた次第です。
海外でのオンエアを前提とした音楽の制作
皆さんもよくご存知の様に、マスメディア広告に関しては日本と欧米ではかなりそのテイストも取り組み方も違うと言われますが、国内企業であっても海外マーケットを意識せざるを得ない昨今では、より普遍的なメッセージの伝え方が求められる時代になっているように感じています。僕も最近はアジアを始め海外でも放映することを前提とした広告作品に携わる機会が増えましたが、そういった場合、日本や東京でクール(もしくは面白い)とされるものを作るだけでは現地の消費者には訴求しないものになる可能性がありますので、音の方面からもその辺りに最大限留意して取り組むようにしています。
広告に限らず、他のアジア地域、例えば香港やシンガポール辺りに比べると、日本はあらゆるコンテンツの個性が際立っている反面、逆に言えばローカル色が非常に強い(カッコよく言えば「ハイコンテクスト」な)わけですから、そのままで他の地域にも浸透を望むのは難しい場合があります(これは音楽にも強く言えます)。せっかく培った個性をわざわざ打ち消したり平板なクオリティにする必要はないですし、方向性が定まらないままどっちつかずのグローバリゼーションを志向するのはかえって失うものも大きいでしょうが、お互いの「接点」を探し出すもしくは創っていく努力は今後ますます必要になるでしょうね。
「暗号」としての日本語、コンテクストな日本の文化
少し視点が離れますが、先日興味深いコラムを読みました。データベース・マーケティングの世界での話ですが、日本語でのデータ管理は非常に難しく、まず日本語を「暗号」だと割り切って取り組む位の真剣さと労力が必要だとのこと(著者の言葉を借りれば、「日本語はそれ自体暗号と考えるべきしろものなのだ」と)。このコラムは特にグローバル市場がテーマの中心ではなかったですが、この「暗号」という言葉が非常に印象に残りました。コンテンツやコミュニケーションの世界においても、我々が先天的・後天的に持つこの「暗号性」「暗号問題」を自覚することはとても大事なのではないかと思います。
少しカタい話になりましたが、明日の「日本橋アクエリアム・ナイトラウンジ」のお知らせをしておきますね。僕の出演時間はDJを含めて21時から24時過ぎまで、スイスから来日したMeri Neeser をフィーチャーしたライブは22時過ぎを予定しています。1曲以外は初披露のバージョンで、今後同様のライブを行う予定はないので、是非お時間を作ってお越し頂けると幸いです。三井ホールへのアクセスですが、COREDO室町のホームページを参照にして頂くと分かり易いかと思います(COREDO は日本橋と室町がありますので、お間違えないよう)。
最後に、以前バンド形式で行った”Hey Boy, Hey Girl” のライブ映像をご紹介しておきます。今回は二人で行いますが、その分レアなCFのアコースティック(的)セットも用意しています。