日々のつれづれと、その日のお気に入りを紹介するマイクロブログ『Day By Day』を月別にまとめたページです。今回は2024年9月分を紹介。最新の投稿は https://www.tatsuyaoe.com/microblog/ にて。
2024年9月30日
(2/2)創造も「結果(作品)を後ろから見れば」編集的作業ではあるが、前から進むその途中過程にはひらめきやワクワク、飛躍、矛盾、混乱、絶望といった「不思議」や「ロマン」、「アクシデント」が潜んでいる。その冒険の旅に魅せられるからこそ人間は創造に挑むのです。「さあ今日も情報を編集するぞ!」なんて風に作曲したりキャンバスに向かう人はあまりいない。
[増補版]知の編集工学 (朝日文庫) | Amazon.co.jp
2024年9月30日
(1/2)故松岡正剛氏『知の編集工学』は不朽の名著(僕が読んだのは初版)。ただ残念なのは、彼は「創造」や「クリエイティビティ」という言葉を信用しておらず、創作活動はもちろん、生きることすらも「情報の編集」という範疇で捉えていた点。そのドライさ、「身も蓋もない」感じはリチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子』の情報版と言っても良いかも知れない。
2024年9月29日
メアリー・オリヴァーはピューリッツァー賞も受賞している世界的な女性詩人だが、日本ではなぜか翻訳本が一冊も見当たらない。『A Thousand Mornings』から、印象的に残った詩を一つ紹介(意訳です)。「答えを沢山知っている者は”情報の劇場”にしばしば顔を出し、自分の知識をさもありがたそうに披露する。頭の中が”問い”だらけの者は、自らの安らぎを求めて音楽を創る」
Mary Oliver - A Thousand Mornings | Amazon.co.jp
2024年9月28日
欧米の名うてのインディ・レーベルが集まって、「音楽シンクタンク」ORCAを結成したという。彼らのレポートに目は通したし、「アーティストの育成にはレーベルは必須な存在」という言い分は理解できるが、レーベルの人的・金銭的支援があっても、アーティストが自分で勉強し、警戒すべき「宿題」が減るわけではない。時には、彼らから自分を守るために弁護士を雇う必要すらある。
Indie music labels form ORCA, a think tank for ‘recorded culture and arts’ - Music Business Worldwide
2024年9月27日
最近ニュースはネットではなく紙で読みたいと思う機会が増えた。かといって今更新聞を購読する気にもならず、一つに絞り込めるほど信頼を置いている新聞もない。一時期「スロージャーナリズム」という概念が話題となって、その先駆けとも言える「Delayed Gratification」が注目を浴びた。様々な方面で、リーマンショック~コロナ禍までの流れに対する反動が加速してきたかな。
あえて紙媒体で勝負する、英国スロージャーナリズム誌の挑戦 | Forbes JAPAN
2024年9月26日
スティーブン・キングの『小説作法』という本を随分前に読んだ。ホラー小説『キャリー』でデビューする前、ダンキンドーナツで働く妻とメイン州のトレイラーハウスに住み、高校教師の傍らアダルト雑誌に記事を書いて糊口を凌いでいたという。これらの記述について殆ど記憶にないのは、当時僕がまだアメリカの事情に疎く、リアリティを持って読めていなかったということだろう。
How Stephen King’s Wife Saved ‘Carrie’ and Helped Launch His Career
2024年9月25日
(昨日の続き)自分の活動範囲や得意領域とされている分野でも、意外と穴だらけな事が往々にしてある。昔あるDJが来日した際に一緒にツアーをしたが、僕はブッキングされる少し前まで彼の名前も曲も知らなくて、オーガナイザーが腰を抜かした。そして、何千回と聴いてきたMary J Bligeの「Be Happy」はこれがソースだったことを今日知った。灯台下暗しにもほどがある…(笑)。
You're so Good to Me - YouTube
2024年9月24日
読書は好きだけど、音楽の聴き方と似ていて、僕はさほど「多読(乱読、雑読)派」ではない。音楽に関しては様々なジャンルや時代、地域のものを聴いてきたとはいえ、この20年位の邦楽に関してはほぼ何も知らないし、洋楽もチャート物はかなり疎い。ジェームス・ダイソン氏のこの本は、(彼の新刊に比べ)初期の奮闘ぶりから学べるところが多いので、2回購入して読んでいる。
『逆風野郎 ダイソン成功物語』Amazon.co.jp
2024年9月23日
同調意識や同調圧力というのは日本だけでなく、最近は海外でもよく取り上げられる社会問題。SNSやショッピングサイトでの推薦システム等のアルゴリズムが人間の行動や思考パターンを同質化・均質化させ、単純化しすぎたグループ分けによる分断や軋轢を助長した可能性は拭えない。この流れに抗いつつバランスを回復する、つまり自分を救えるのは自分しかいない。
アルゴリズム化するファッショントレンド。私たちはなぜ、同じような服を着るようになったのか | Vogue Japan
2024年9月22日
対立する二つの要素をそのまま共存させる「対極主義」を意識的に用いたのは岡本太郎だが、必ずしも対立しない複数の要素を並置・隣接させる手法はjuxtapositionと呼ばれる。僕のDMやCFは「動」、Suchnessは「静」のプロジェクトとも言えるけど、これらは自分の中では対立というよりも常に隣り合わせにある。などと考えていたら、juxtapositionを用いた素晴らしい詩に出会った。
Myth by Natasha Trethewey • Read A Little Poetry
2024年9月21日
一人の人間には2つの「セルフ」がいる。セルフ1は「うまくやれ」「失敗したらどうする?」「恥ずかしい」などと、セルフ2に余計な口出しをし、世話を焼く。この雑念から解放されて、セルフ2が無心で事に取り組めたら万事が上手く行く。僕は経験上、曲作りとウォーキングの時はセルフ1が殆ど登場しないことが分かっているので、創造と運動の2つは何があっても続けていこうと思う。
W.T.ガルウェイ『新インナーゲーム』 - 読書メーター
2024年9月20日
今日MER『Cyber City Connection』が発売されました。各サービスへのリンクはTopicsなどのページを参考にして頂くとして、まずはSoundCloudにもアップしたアルバム・メドレーをお楽しみ下さい。僕の方は、年内にもう1枚アルバムをリリース出来ればと構想を練っているところです。
Stream MER - Cyber City Connection: Urban Synthwave and Electro Funk [Album Medley] | SoundCloud
2024年9月19日
ジャズピアニストの故マッコイ・タイナーは、あるインタビューで「俺は君が指摘したような複雑な理論を考えて演奏してないよ」と一笑に付していた。音楽を文字で語り、頭で聴く評論家や「先生」が取り囲むようになると、一般の人には「めんどくさい」(良く言えば「ハイコンテクスト」な)音楽となって、進化や普及が止まる。好き嫌いはさておき、そこがカントリーやヒップホップとは対照的。
McCoy Tyner - For Tomorrow (Munich Summer Piano Festival, 1983) - YouTube
2024年9月18日
6月にリリースしたOE『Early Techno Works 9697』のメドレー(アルバム・サンプラー)を作りました。解説にあるように、収録曲の大半は、当時のDATテープに収録されていた最終ミックスから起こしたものです。当時(デビュー前後)からCF『Bustin’ Loose』辺りまでは、昼間のエクセルやパワポの作業用に買ったノートパソコンを毎日持ち帰って曲作りをしていた。
OE – Early Techno Works 9697 | Discography
2024年9月17日
L.T.Dというグループの『Kickin’ Back』は、日本でも僕より少し先輩の世代には通称「ビビンバ」で知られたディスコ・ファンクの名曲。この”kick back”は「リラックスする、くつろぐ」という意味のスラングで、確かにすぐ後に”my time to relax”って歌ってるけど、曲のテンションが高すぎてリラックス感は全然ないやん!なぜか今日そんなことをふと考えた。
L.T.D - Kickin' Back 1983 - YouTube
2024年9月16日
9月20日発売のMER『Cyber City Connection』のアルバム・サンプラーを当サイト先行でアップしました。このメドレーを聴いて、発売後に皆さんが利用しているストリーミング及びダウンロード・サービスでフルバージョンを楽しんで頂けると嬉しいです。昨今の欧米発サイバーパンク、シンセウェイブ物に近づき過ぎず、独自の解釈と時代観で制作・編集しました。
[Album Medley] MER – Cyber City Connection: Urban Synthwave and Electro Funk
2024年9月15日
日本のニュースは気が滅入るし、アメリカの新聞は左右の政治バイアスが強すぎて読む気になれない。イギリスのFinancial TimesとGuardianは毎日覗くけど、別に知らなくても困らない(笑)。そこに来てインドの経済メディアは活気があって、しかもアメリカより地に足の着いたトーンが好感が持てる。学生の時に様々な挫折を味わったというPerplexityのCEOの記事が興味深い。
‘I was depressed’: Aravind Srinivas(Perplexity CEO) - BusinessToday
2024年9月14日
ジェームズ・ダイソン氏が30年前に日本で購入した電動鉛筆削りを絶賛していたので調べてみたら、確かに製造は日本だが、デザインはイギリス人のケネス・グランジ氏によるものだった。ところでDuckDuckGoで「ダイソン 電動鉛筆削り」と検索するとダイソーの鉛筆削りの記事ばかり上位に出てくる。僕が普段やたらとダイソーの商品をチェックしてるわけではないのだけど…。
Pencil sharpener | スミソニアン研究所
2024年9月13日
散歩の時に聴いたポッドキャストで、誰のことか分からない固有名詞が何度か登場したので、頭の片隅にひっかかっていた。「ココシュナー」って誰だ?ユダヤ系でSchnurという人は時々いるけどそこまで有名な人はいないよな…なんて考えていたらようやく誰のことかが分かった。非アメリカ人の固有名詞はしばしば自己流で発音される。なので僕の苗字も正しい発音はまずムリ(笑)。
IN BRITISH ENGLISH, HOW DO YOU PRONOUNCE CHANEL - YouTube
2024年9月12日
アメリカでジャズを聴く人は人口の1.4%から数%しかいないというデータがある。僕は自分の曲を制作していない時は大抵ジャズを聴いているので、リスナーとしては随分少数派だと思う。ただ、僕はどのジャンルにもコミュニティにも帰属意識や思い入れがなくて、文化批評やべき論、未来展望には全く関心がない。自分の音を聴いた人がその瞬間ワクワクしてくれることに心血を注ぐだけです。
「ジャズの世界は狭すぎるし、アメリカは根本的に間違ってる」シオ・クローカーがそう語る真意とは?
2024年9月11日
「皮肉を言えるのは賢い証拠」だと勘違いする人は多い。なんて言うのは、自分もかつてはそう考える未熟者だったから。皮肉や冷笑、嫌味の大半は、自信のない臆病者がすがる自己弁護や逃げにすぎない。「皮肉は最もレベルの低いウィットだが、最もレベルの高い知性だ」と言ったのはオスカーワイルドだとされるが、出典の根拠がないし、皮肉を知的に使いこなせる才人はそうそういない。
Quote by Oscar Wilde: “Sarcasm is the lowest form of wit”
2024年9月10日
前評判が良く、好きな音楽監督が選曲を手掛けている『ブリタニー・ランズ・ア・マラソン』を見た。見慣れた場所が色々出てきて、自己成長のストーリーの組み立ても良かったのでライトな視聴としては楽しめた。主人公が皮肉屋で他人に攻撃的なのは自信のなさの裏返しなのだけど、そこを大目に見てあげて感情移入できるかによって評価が分かれるだろう。
Brittany Runs A Marathon - Official Trailer | Amazon Studios
2024年9月9日
訳あって、このところ楽曲のデータベースを修正・追加する機会が頻繁にある。エクセルのマクロやPythonの使い方一つで随分作業が軽減できるけど、ある程度は自分が勉強しないと使い物にならない。アルゴリズムに翻弄され、それら(を操る人間)の奴隷になる人生を真剣に避けようと思うと、僕ら人間側が学び、考えておくべき「宿題」が沢山あることに気付かされる。
アルゴリズム不安の時代:「好きなものの劣化版」をすすめられるのはなぜ? | WIRED.jp
2024年9月8日
AI(テクノロジー)で淘汰される仕事が増えると言われて久しいが、雇用から政治家まで、能力や意欲のある人材よりも、権威や立場、縁故にしがみつく輩を守り、甘やかす風潮が強い日本では、現実的には人々が杞憂するほどドラスティックに社会が変わることはないと思う。むしろ、仕事はAIに任せて、座っていればそこそこ給料がもらえる(ナメた)役職は一定数死守されるだろう。
厚切りジェイソンが斬る、日本人の“Why!?”な働き方 | 転職type
2024年9月7日
エスティー・ローダーは自伝の冒頭で、若い頃味わった屈辱について触れている。自分の化粧品カウンターに現れた客に「素敵なブラウスですね。どちらでお求めで?」と聞いたら、「あなたに買えるはずないわ」と一笑に付された。残りの生涯、二度とそんなセリフは言わせないと心に誓った彼女は、90歳近くまで情熱的に現役を貫いた。復讐心は相手にではなく自己成長の火種に使うべし。
Vengeance Is Mine - Dark Model | Spotify
2024年9月6日
『Sunshine』は第二期Captain Funkの作品の中で一番愛着がある。オリジナル版をリリースした2009年前後はClub Model Electronicという会員制配信サービスの準備や会社運営の些末な仕事で忙殺されていて、このアルバムは作曲からミックスダウンまで3か月で仕上げた。今回のDeluxe Editionでは、音のイキの良さは残しつつも、今に相応しい洗練を目指しました。
[Album Sampler 動画] Captain Funk – Sunshine (Deluxe Edition)
2024年9月5日
昨日の話の対極に、ナシム・ニコラス・タレブが『ブラックスワン』で説いた「Narrative Fallacy(物語の誤謬)」がある。人は科学的な根拠や因果関係のない、こじつけ話に誘導されるクセがあるということ。その通りなんだけど、たとえ「幻想」であっても、人間は物語なしに生きていく理由を見出すことは難しい。そんなことを「ロッキー・ザ・ファイナル」を見ながら考えた。
人生ほど重いパンチはない Nobody is gonna hit you as hard as life - YouTube
2024年9月4日
物や情報が過剰に溢れる時代にはそれを整理・編集し、新しい価値や文脈を添えて魅せる「キュレーター」が重宝される。とは言うけれど、物が今ほど溢れていなかった時代にも柳宗悦のようなキュレーターはいたし、みうらじゅんさんこそがその継承者だと思う僕は、キュレーションに必要なのは結局、対象物への「愛=思い込み、のめり込み」だと信じている。逆に、愛のないキュレーションは味気ない。
What is “Curating” in Art? (in 90 seconds) - YouTube
2024年9月3日
野口悠紀雄氏の記事『アメリカはなぜ日本より豊かなのか』 を紹介しようと思ったら、この『超独学法』の方が目に留まってしまった。僕も音楽をはじめとして様々な事を独学で習得してきたから、彼の主張には大いに賛成。最初の話に戻ると、2024年現在、稼ぎの絶対額で言えばアメリカは日本より遥かに多いけど、治安や健康、つまり「命」の問題を抜きにして議論するのは非現実的。
第1章 独学の第一歩を踏み出そう|野口悠紀雄
2024年9月2日
デル・コンピュータの創業者マイケル・デルの『Play Nice But Win』を読書中。発売時に買って丸3年寝かせていたのだけど、カール・アイカーンからKKRまで様々なチンピラ(笑、誉め言葉)が出てきてページが進む。レバレッジバイアウトや自社株買いなどファイナンスの話は好きでもないのに手に取ったのは、ひとえに彼のフレンドリーかつ大胆な人間性に興味があるから。
Play Nice but Win - Michael Dell
2024年9月1日
この4、5年制作に没頭していたので作品と楽曲は沢山仕上がったけれど、それを聴き手に伝え、広げる作業に関してはかなり後回しにしていた感がある。時間をかけて丁寧に作った作品が音と情報の海に埋没してしまうのは勿体ないので、今後しばらくはプレイリストやアルバムのダイジェスト映像を作って普及活動をしていきます。ご支援いただけると嬉しいです。