先週Youtubeに『Dark Model – Orchestral Driving Electro Mix』ムービーを公開しました。AdobeのAfter Effects(動画作成ソフト)の使い方にも慣れてきたので、先月アップした『Captain Funk – Summer Mix』よりももっとコマ割りを多くして、ストーリー性を盛り込んでみました。もうお楽しみ頂けましたか?
音源制作について
今回のムービーも『Captain Funk – Summer Mix』同様、動画編集以前にまずはしっかりした音源を組み立てることに集中しました。このムービーのシリーズは他人の音源をミックスするDJ Mixと違って、Model Electronic RecordsのYoutubeチャンネルにアップする音源は全て自分のオリジナル制作曲であることを前提にしています。「自分の曲をアルバムとはまた違う曲順やチョイスで展開し、新たな音楽ストーリーを作る」というのがこのシリーズの出発点にある動機です。これまで何百とオリジナル楽曲を制作し、殆ど全ての権利を自分で管理しているのだから、何の変哲もないDJ Mixや他人の曲を紹介している連中とは一線を画した視点で独自のコンテンツを届けたいという、クリエイターとしての意地もあります(笑)。
複数の楽曲がDJ Mixの様にシームレスに流れていくように構成してはいますが、自分の曲をDJソフトやCDプレイヤーでリアルタイムに繋いで録音しているわけではなく、実際にやっていることはライブ音源の制作プロセスに近いと思います。自分の制作した楽曲とはいえ、制作時期やその時のサウンド・コンセプト、アーティスト名義が違えば音の質感も随分違ってきますから、バラバラな質感を持った曲達を音のクオリティの面で違和感なく一つのストーリーとしてまとめ上げるには、各曲を(リズム、ベース、オーケストラ部分、パッドなどの)トラックレベルに分解して検証していくといった、微妙な調整作業が必要になります。
というわけで、ミックスに収録された7曲のうちの大部分はProtoolsやStudio Oneの元データ(セッション/ソング・データ)に戻って、素材から料理しなおしました。そのお陰でCaptain Funk『King of the Highway(Dark Model Remix)』など新たなアレンジが生まれたので、素材レベルに戻って考えるだけの収穫があったと言えるでしょう。
『Cruel World』は今回初公開の新曲で、ゴシックなテイストを持ったDark Modelらしいパーカッシブな曲です。
映像編集について
そのようにして作った14分30秒に渡るミックス音源を何度も聴きながら映像のコンセプトや流れを構想していくわけですが、僕の場合(というかYoutubeのチャンネルにアップする動画シリーズの場合)、映像のマテリアルが無尽蔵にあるわけではありません。今回のムービーの素材として利用した購読制のストックムービー・サービスは豊富な動画が揃っているものの、素材提供者はバラバラだし、頭に描いた絵コンテ通りの映像が常に存在するわけでは当然ないので、時にストーリーに修正を加えたり、別のコンセプトで音楽を捉えなおしたりと、「有り物」に自分のアイデアを馴染ませていくコツのようなものが要ります。この感じはその昔、サンプリングやコラージュで音楽を作っていた時の感覚に近いかも知れません。無数の映像にタグをつけて選び編集していると、「あれ、この作業の感覚は以前嫌というほどやったことがあるな」と記憶に甦ってくるのです。
サンプリングによる作曲はもう20年以上やっていませんが、Captain Funkのデビュー前後時は何千、何万というレコードやCD、著作権フリーの素材を聴いて、そこから楽曲の構想やスケッチを練ることを日常的にやっていたので、理想的なネタにどうしたら出会えるか、どう音源を「掘れ」ば時間を浪費しなくて済むか、普段どのように音源を分類し仕込んでおけばすぐ作業に取り掛かれるか、などに関するコツ/ハックや嗅覚が冴えまくっていました(笑)。今思うに、サンプリングで作曲をするというのはセンスや構成力以前に、膨大なインプットを記憶する力とそれを捌く情報処理能力と編集能力を必要とする作業なのですね。頭の中にある程度のボリュームの知識ベース(knowledge base)が出来上がってないと何も始まらないという点で、自分が現在行っている楽器演奏やメロディから(記憶よりもインスピレーションを頼りに)作曲するオーソドックスな方法とは脳味噌の働かせ方が随分違う感じがします。
それはともかく、こういった動画編集の作業を続けていくうちに自分の中のビジュアル版の情報処理能力や構成力が育っていくと、音楽制作の方にも良い刺激を与えてくれるのではないかなと期待しています。
ちなみに今回は『Driving Mix』と銘打っているだけあって、車やドライブにまつわる映画で見られそうなシーンや要素を盛り込みながら、ロード・ムーヴィー的な展開にまとめてみました。ざっくりではありますが、深夜の西海岸のロサンゼルス、ハリウッドに始まり、アリゾナ、そしてユタのボンネビル・ソルトフラッツへの旅という構成になっています。アメリカでの車の運転が苦にならない方なら、何日かかければ実際に車で辿れるコースなのではないでしょうか。
[追記] ムービーに収録した新曲・新ミックスをリリースしました
このビデオに収録されているミックスと新曲は、Dark Model『Orchestral Driving Electro Mix』として正式にリリースされました。Disgographyのページで詳細を確認して、各自ご利用のサービスで是非アルバムをご堪能下さい。