今回は先日Soundcloud にアップした、Dark Modelのアルバム「Saga」収録曲「Dawn of Resurrection」にまつわるエピソードを紹介していきます。
厳しい残暑が続く中、日本の皆さんは元気でお過ごしでしょうか?僕の方は次のリリース・プロジェクトに進み、このところ制作に集中しています。リリースの詳細は後日お伝えするとして、先日まで取り組んでいたDark Modelから気持ちを切り替える意味もあって、このレコーディング用に Ovation というメーカーのエレクトリック・アコースティック・ギターを購入しました。以前エレアコはタカミネのものを使っていましたが、音はお互い一長一短あれど、ボディ、ネックのフィット感に関して言えば、自分にはこちらの方が合っているように思います。久々にギターを抱えながら作曲に取り組み、新鮮な気分を満喫している今日この頃です。
Contents
新曲: Dawn of Resurrection(アルバム「Saga」フィナーレ)
「Dawn of Resurrection(復活の夜明け)」は、アルバム「Saga」の最後を飾る曲です。 微かなアンビエントのイントロから始まり、ソプラノ・ヴォーカルをフィーチャーしたアンセム的なテーマへとビルドアップしていくこの曲は、「Saga」を通じて描かれたストーリーを終焉に向かわせる役目を果たしています。しかしそれと同時に、タイトルはあなた(リスナー)のヒーローとしての旅がまだ続くことを示唆しています。
「Resurrection(レザレクション)」というのは、revival(リバイバル)、resurgence(リサージェンス)、rebirth(リバース)などの「復活・蘇生」一般を表す単語とは異なり、Rを大文字にして「キリストの復活」という意味で使われることが多い、宗教的なニュアンスの強い言葉です。この曲でこの言葉を使ったのは、そういった特定の宗教上の、もしくは一度きりの歴史的な出来事を伝えたかったからではなく、皆さん自身の人生の中で普段遭遇するであろう、概念的・形而上学的な「復活・よみがえり」を、少しスピリチュアルなニュアンスを含めて表したかったからです。
生きていれば、誰でも精神的に打ちひしがれ、絶望的な気分に襲われることはあるでしょう。しかし絶望や不安というのは自分の心の中で(勝手に)創り出したものでしかありません。まして他人があなたが絶望的な状態にあるかどうかなど判断を下す筋合いもありません。意思さえあれば実は、自分の人生の目的や意味を再発見・再定義し、自己の英気を取り戻し、本来の自分をよみがえらせることは、いつでも出来るものです。(僕は特定の宗教に属していないので)宗教的な擦り込みや学問的な拠りどころはない代わりに、さらには巷の自己実現本の受け売りでも全くない代わりに(笑)、これまでの自分の経験から、僕はこれを強く信じています。
「我々はいつでも復活・変容し、自分の闘志(「心の中のヒーロー」)を再び奮い立たせることが出来る」、この曲にはそういったメッセージを込めています。
「どういうわけか、太宰の『人間失格(No Longer Human)』が浮かんだんだ」
この曲についての興味深いバックストーリーを披露しましょう。僕がこの曲のタイトルを「Dawn of Resurrection」に決定する前、文学を専門とし、大学教授・作家でもあるマンハッタン在住の友達(ユダヤ系アメリカ人)の一人に、この曲のタイトルとしてこれが相応しいと思うかどうか質問をしてみました。彼はいいねと答え、付け加えてこう言ったのです。「この曲は、どういうわけか、僕が大好きな太宰治の『人間失格(No Longer Human)』が頭に浮かんだんだよね。」
生粋のアメリカ人である彼から太宰の名前を耳にしたのは全く意外だったし、「人間失格」がフェイヴァリットだという意見にはさらに驚きましたが、彼がこの曲と、苦悩に満ち溢れた、ダークな日本文学作品との間に何らかの共通点を見出したという事実には非常に興味をそそられました。
先に述べたように、僕はこの曲に、「自分を変容させることで、(苦闘、逆境、絶望などの)ダークネスを切り抜ける方法を見つけることができる」という、”最終的には”ポジティブでモティベーショナルなメッセージを込めています。これは一見、太宰が「人間失格」を通じて伝えたかった(であろう)こととはかなりの隔たりがある、それどころかむしろメッセージのベクトルや帰結が全く逆を向いている様にすら思えます。
とはいえ、個人の苦闘、すなわち人間の精神の「陰」「闇」の部分を出発点としてストーリーを紡ごうとしている点では相通じるものがあるのかも知れないですし、(その友達が太宰がキリスト教徒だったことを知っていたのかどうかは分からないものの)、彼のコメントは、resurrectionという言葉と、「人間失格」の根底に流れている太宰なりのキリスト教観や原罪意識を重ね合わせた上でのものだったのかも知れません。真意は分かりませんが、彼のフィードバックは、今後の自分の創作活動に一つ新たなヒントを与えてくれたような気がします。
|
「Dawn of Resurrection」レビュー紹介
以下はこの楽曲を描写した素晴らしいレビューの事例です。音楽とともに、これらの記事もお楽しみ下さい。
「最後の曲『Dawn of Resurrection』はゆっくりと始まるが、程なくビルドアップしていき、アンセム的なハーモニーを持った大団円へと向かっていく。完璧なエンディングだ。」
「締めくくりの曲『Dawn of Resurrection』は、このアルバムでリスナーが体験する感情の起伏-すなわちエンパワーメントの圧倒的な高みから、内省の低みまで-に満足の行く終わりを告げる役割を果たしている。」
「『Dawn of Resurrection』はソフトなストリングスを特徴とした、デリケートな作品である。この楽曲は徐々に別のパワフルなアンセムに移行する、正にアルバムのクライマックスだ。」