今回はDark Modelのニューアルバム「Saga」 から新曲「Avalon」、そしてニュース/音楽メディアでのレビュー紹介第五弾です。アメリカのニュース系ウェブサイト、ハフィントン・ポストで5点中4.5点の高スコアを頂きました。
前回の投稿から少し間が空きました。日本は現在梅雨空が続いていると聞きますが、お元気でしょうか?アメリカ東海岸は長かった冬と雨の季節が終わり、(春を飛び越して)ようやく夏らしい気候が訪れています。美術館に行ったり、散歩しながら読書をするのに適した季節は本当に短いので、有意義に過ごしたいところです。
さて、Dark Model「Saga」発売から3ヶ月経ちましたが、未だに様々なメディアでこのアルバムを採りあげて頂いています。今回はレビュー紹介に加えて、本日Soundcloud にアップしたアルバム収録曲「Avalon」のバックストーリーも紹介しておきますので、お楽しみ下さい。
新曲「Avalon」 – 「聖戦」はまだ始まったばかり
この曲はアルバムの2曲目に収録されています。「Unleash Your Inner Hero (心のヒーローを解き放て)」というアルバムのタグライン(キャッチコピー)にあるように、この曲は勝利のエナジーに満ちていて、叩きつけるマーチング・ドラム、ダブステップ的なビート、そしてうなるベースの上に、ファンファーレ的な「トゥッティ(合奏)」のブラス&ストリングス・アレンジをフィーチャーしています。とはいえ、サビとトゥッティのパートの間に現れては消える数カ所のミステリアスなパートからその予兆を察することができるように、この曲はまだ、(あなたの)永遠の勝利や幸せなクライマックスを保証しているわけではありません。一つの勝利の後に何がやってくるかは誰にも分からないのです。「Avalon」においては、「サーガ(聖戦)」は始まったばかりです。
僕がこの楽曲に取りかかった時、こんな感じのパノラマ風景を想像しました。戦いを勝ち得た後、空を飛ぶ乗り物を操縦する主人公(あなた)は、まだ目の前に立ちふさがる敵、鳥などの飛翔動物、岩の山岳地帯などの障害物をかわし、すり抜けながら、当面の目的地である伝説の島アヴァロンへと向かいます。
実はこの「Avalon」と同時に、曲のタイトルとして、宮本武蔵と佐々木小次郎という二人の剣士が戦ったことでお馴染みの場所、「Ganryū-jima(巌流島)」も思い浮かんだのですが、そのタイトルでは(戦いそのものに意識が集中されすぎて、)この音楽のストーリー性を皆さんに思い描いてもらうことが難しかっただろうと思います。
この曲に関しては幾つかのレビューが的確で想像力豊かな説明をしてくれているので、そちらも掲載しておきます。
「続く二つのトラック、『Avalon』と『Rage and Redemption』は違った方法で、等しく元気づける音のランドスケープ(音楽模様)を与えている。『Avalon』の方は壮大で爆発的なエナジーで始まり、一定のペースで流れ、途中ミステリアスで暗示的なパートを含んでいる。『Rage and Redemption』の方は、クラブの現場で対応出来る準備の整ったダンスビートが炸裂している。」
「『Saga』は飛翔的な『Prelude』で幕を開ける。この曲は次の『Avalon』で魔法の王国の秘密を明らかにするための、イントロダクションの役割を果たしているように見える。『Avalon』では、広大なブラスによるファンファーレが、ダブステップ・スタイルのハーフタイム・ビートには被さる形で吠える。そこでは栄光と雄大さが全面に描かれている。ある人は、草が茂って青々とした崖の間を、滝がきらきらと水面を光らせている光景を想像するだろう。そびえたつ城の周りの堀を川が形作る。フェアリー・テイルの世界だ。」
「真面目に言う。これは聴かなくてはいけない。」- ハフィントン・ポスト(米)・レビュー
次に紹介するのは、アメリカのニュースウェブサイト、HuffPost (ハフポスト)です。The Huffington Post の名前で親しまれていますが、今年の4月にブランド名を変更したようです。今回のレビューは、音楽から政治まで手広い話題を手掛けるライター、Johnny Taylor Jr.氏が書いたものです。他のレビューを見ると比較的辛口なものが多い中、5点中4.5点の高評価を頂いて、とても嬉しく思っています。あと、”Skip”といって、アルバム中の飛ばして良い曲を選ぶパートがあるのですが、この Saga に関しては、「なし(冗談抜きに、全曲聴くべし)」ということでした。作り手としては、飛ばして聴いても良い曲なんて当然1曲も入れてないつもりですが(笑)、一応安心した次第です。
評価: ****1/2 (5点中4.5)
マストな曲: Rage and Redemption, Survivors, Storm Goddess
スキップしてよい曲: なし(冗談抜きに、全曲聴くべし)
Huffington Post “Now Hear This: Saga – Dark Model”
「タツヤ・オオエはインディペンデント・エレクトロニック・ミュージックで最も重要な名前の一つだ。彼のプロジェクト、Dark Model は映画の予告編や全国放送のテレビCM でもフィーチャーされており、そのファースト・アルバムは第14回インディペンデント・ミュージック・アワードのダンス/エレクトロニカ部門でノミネートされた。言うまでもなく、私はかなり興奮してこのアルバムを聴いた。」
彼は全13曲を1曲づつ解説してくれています。詳細は原文を見て頂くとして、これまで紹介したことのない曲に関する部分を抜粋して紹介します。
「最初の曲の『Prelude』は、アクション映画でも使われそうな曲。イントロは、あなたの二歩背後にいる犯人に向けてのテーマソングといった感じ。クライマックスに向けて激しくペースを上げていく。」
「エドガー・アラン・ポーにインスパイアされた『Danse Macabre』は、とても繊細なアニメーションのサウンドトラックのようだ。ボーカル部分だけでも恍惚状態に持って行かれる。」
注:残念ながら、エドガー・アラン・ポーにはインスパイアされていません(笑)。他のレビューの指摘にありましたが、この曲はサン=サーンスの「Danse Macabre」とも無関係です。元々タイトルを「Dance of Death」にしていたのですが、知り合いの物書きのネイティブ・スピーカーに「ひねりを入れてフランス語にしてみたら?」とアドバイスをされて、このタイトルにしたのです。
「最後の曲『Dawn of Resurrection』はゆっくりと始まり、徐々にビルドアップをし、アンセム的に盛り上がり、余韻を残したアウトロに繋がる。完璧なエンディングだ。」
「もしインストゥルメンタルのテクノ・オーケストラをベースとした、アニメやホラータイプの映画音楽が好きな人なら、このアルバムはパーフェクトだ。もしあなたがそういう音楽が好きではないとしても、これはパーフェクトに近いアルバムだ。ランニングマシンに乗って、ヘッドフォンをして、殺人犯があなたを追っかけている気持ちになってみるといい。これがそのためのサウンドトラックだ。カロリーを消費して、1時間が10分に思えるだろう。冗談はさておき、このアルバムは聴かなくてはいけない。」
彼は実はスタンダップ・コメディアンでもあるらしく、文章の節々に独特なユーモアが感じられます。