Captain Funk名義で選曲、ミックスされたコンピレーション・アルバム。
トラックリスト
01. Captain Funk – Twist & Shout
02. Freestylers Featuring Navigator – Warning (Soul Hooligan Remix)
03. Shy Fx – Funksta
04. The Untouchables – Wild West
05. The Wiseguys – Start The Commotion
06. Terrorvision – Tequila (Mint Royale Chaser)
07. Future Sound Of London – We Have Explosive (Imantronik Plastik Formular #1)
08. Zeb.Roc.Ski & Stieber Twins Feat. DJ Busy – B.Boys Revenge (Z.R.S. Rmx)
09. Pizzicato Five – Lesson 3003 Part 1
10. Freddy Fresh – Chupacabbra (Bassbin Twins Remix)
11. Tzant – Bounce With The Massive
12. Mantronik Vs EPMD – Strictly Business
13. Groovy 69 – Music…
14. Juliet Roberts – Bad Girls (Funk Force Supadub)
15. Captain Funk – O.Y.M. (Christopher Just Mix)
16. Hell – Copa
17. Jt Playaz – Let’s Get Down (Olav Basoski’s Samplitude Mix)
18. Untidy DJ’s – Untidy Dubs Presents Funky Groove (Rhythm Masters Sub Club Mix)
19. Elite Force – Call It Brisco (Revenge Of The Breakbeat)
20. Captain Funk – Bustin’ Loose
21. Bentley Rhythm Ace – On Her Majesty’s Secret Whistle
22. Agent Sumo – Mayhem
23. DJ Scissorkicks – Because I Like Disco
24. The Chemical Brothers – Elektrobank (Dust Brothers Remix)
25. Co-Fusion – Wilbee Wilbee
26. Propellerheads – Spybreak!
27. Grooveyard – Watch Me Now
28. Soul Hooligan – Ride the Pony
29. Captain Funk – Kung-Fu Ska
30. Rocketeer – Zappiness
31. Mad Doctor X – Real Heavy Science (Freestylers Remix)
32. Psychedelia Smith – Different Strokes
33. Lion Rock – Rude Boy Rock (Justin Robertson)
34. Madness – One Step Beyond
35. Flabby – Diggy Doggy Doo (Orchestra Version)
レーベル: Toshiba EMI
カタログ番号: TOCP-64015
リリース日: 1999年4月28日
コメンタリー
メジャーレーベルからのリリースで枚数も相当出回ったので、初期のCaptain Funkと言えば、日本ではこのCDを想起される方も未だにいるのではないかと思います。当時僕が行っていたパーティー『Machinegun』がそうであったように、狭隘なカテゴライズや派閥主義、もしくは形式主義に陥ることなく、様々なスタイルのダンスミュージックを楽しんでもらいたいという思いで選曲とミックスをしました。
東芝EMI(当時)の持つ膨大なカタログと海外ネットワークを活かし、またこのアルバムを担当されたディレクターの卓越した交渉力のおかげで、世界中の新旧ダンス・クリエイターの音源をふんだんに使えたことが、このコンピレーションの選曲の豪華さに大きく貢献しています(交渉の余地なく使用できなかったのは、Skintなどソニー傘下にあった幾つかのインディ・レーベルの音源くらいだったはず)。最初に僕の方で収録曲の倍以上のボリュームの「候補曲」をピックアップし、ディレクターの方に国内外のライセンス元レーベルと昼夜連絡を取って頂いて、そのフィードバックを待っては選曲リストを差し替え、練り直すという作業が続きました。彼から「この曲は使用可能ですよ」と差し替えの代替案を提案頂きつつ、最終的に収録された35曲が決定するまでには、数か月を要したように記憶しています。
自分が普段現場で(自分で買い集めたレコードを使って)選曲を行うのと、一般的に流通・販売するコンピレーション・アルバムのために正式にライセンス(楽曲の使用許諾)をして選曲を行うのは全く別物であって、後者を実現するには人的・政治的・資金的なリソースが大前提。ありがたいことに、そんな音楽ビジネスの実務的でシリアスな部分を、この作業を通して大いに学ばせてもらったように思います。
レコーディングに関しては、その後『Songs of the Siren』の制作で1年近く通うことになる渋谷のスタジオで行いました。数十枚のアナログレコード(12インチ)と数枚のCDを持ち込み、普段のDJと同じように一枚一枚繋いでいった(ミックスした)ものをPro Toolsに一発録りし、トータル74分程度に抑えられるように、曲の長さだけ後で調整しました。このミックスはテンポのアップダウンが激しく、一度フィニッシュしたミックスをいじると、少し曲間を詰めてしまうだけで違和感が生じます。その違和感を最小限にするために、ミックスをあらかじめ矢継ぎ早に、正確にしておく必要がありました。今ならば、自分でミックスすらせずに、全てパソコンのソフトウェアでこれらの処理を済ませてしまえるのかも知れませんが、それだとスムーズな音源は作れても、それぞれのDJの持つクセや人間臭さが音に感じられないのではないでしょうか。
コンセプトについて。当初から、このアルバムは巷に出回っている従来のミックスCDとは一線を画したアプローチを取りたいと考えていました。まずこのアルバムを現場の「実況中継CD」にしないということ。一般的に、ハウスやテクノのDJがライブでミックスした(特に海外の)CDは、出だしこそ比較的カラフルな選曲で始まるものの、必ず途中で失速し退屈になる「魔の時間」がありました。クラブで実際に聴いている時、もしくはこの手の音楽の通(もしくはスノッブ)を自称する人ならば、そういう時間こそ、現場の雰囲気に浸れる(ハマる)心地よい「クールな時間帯」かも知れませんが、普段クラブに行き慣れていない方や、ホームリスニング(集中聴き)の状況では、その「間」はそのまま「曲をスキップするタイミング」になってしまう可能性が大きい。
クラブとそれ以外の環境では、人が音楽を聴く時の時間感覚や態度は大きく異なります。さらに僕の経験から言えば、ダンスミュージックの発祥地であるイギリスやヨーロッパのリスナーと、日本のリスナーとでは、この手の音楽に関する聴き所や勘所が明らかに違います(それは当然、優劣の問題ではありません。一方が一方を真似する必要もありません)。
それらの違いを踏まえて、他の音楽アルバムと同じように、1曲1曲をエンターテインメントとして楽しんでもらいたい、「DJミックス」というより「メドレー」や「メガミックス」に近い形にまで1曲の長さを圧縮することで、この手の音楽の初心者の方達を置き去りにしないようにしたい。幕の内弁当のように様々な曲を、またラジオ番組のように賑やかに楽しんでもらおう。そんなコンセプトをディレクターの方と一緒に練り上げました。
今ならYoutubeやMixcloudなど、もっと長尺で現場に近い形で、また流し聴き的な緩さでダンスミュージックのミックスを無料で楽しめる表現形態がありますが、収録時間に限りがあり、かつ定価が2000円以上はするCDという「高価なメディア」を、(折角の)メジャー流通を通して、この手の音楽を日本のリスナーの皆さんにどう紹介すれば意味のあるリリースになるのか?そんなことを模索した当時の自分なりの答えがこのアルバムです。あれからもう20年近くも経つことに驚きを禁じえません。