フューチャリスティックな音の旅
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OEの3作目は、オオエがこの名義でのライブパフォーマンス用に作曲した楽曲を中心に編集されている。ダークで実験的だった『Physical Fiction』をリリースし、クラフトワーク、ホルガー・シューカイ(元カン)、大友良英らとのギグを含むツアーを行った後、彼はスタジオに戻り、ツアー中に使用した楽曲素材を洗練させ、それらにカラフルな質感を加えることに集中した。
このアルバムは「ポップとエレクトロニックの間」を行き、(バート・バカラックの「This Guy」の意外なカバーで聞かれるように)自らのヴォーカルをフィーチャーしている点で、OEとしてのファースト『Here and You』と共通部分があるかも知れない。しかしながら、ファーストがオーガニックでアコースティックな要素を中心に構成されていたのとは対照的に、彼がここで目指しているのは、もっとコンテンポラリーで近未来的なエレクトロニック・サウンドである。「ディレクターズ・カット」というタイトルには、自ら音楽の「監督」として、その近未来的な世界観を一つのストーリーにまとめ上げるという意味が込められている。
このアルバムはエレクトロニック・ミュージックの愛好家だけでなく、アートディレクター、建築家、現代音楽のアーティストなど、多くのクリエイティブな職業に従事するプロ達からも称賛を受けた。特筆すべきは、アムステルダムを拠点に活動するピアニストTomoko Mukaiyama(向井山朋子)が、彼女のコンサートでこのアルバムの収録曲「Tessera」に独創的なアレンジを施し、演奏した事だろう。
アルバム・レビュー
前作の『Physical Fiction』はノン・ビートでノイズ中心のアヴァンギャルドな作品だったが、今回はそれとは対照的な、ポップでカラフルな音になった。久しぶりにダンス・ビートの躍動感を取り戻し、リズムもドラムン・ベースや変則的ブレイク・ビーツ、ピアノの多重録音だけでグルーヴを表している曲など、多彩なアプローチで独自のビート感を追求。また、本人の手弾きによるピアノやシンセサイザーのブライトな音色が多く、全体をポジティヴでファンタスティックなムードで貫いている。オオエのポップな資質が全面的に発揮された会心作だ。
(小山守)
前作で過激なサウンド・コラージュを展開したオオエが、今作ではポップなファンク・ビートを使用してキャッチーな世界を構築。傑出したソングライティングの才能をも存分に発揮している。」
(「CDジャーナル」データベースより)
トラックリスト
1. Tessera
2. The Grid
3. Time Has Told Me (Revisited)
4. This Guy’s in Love With You
5. Helicity
6. It Happens
7. Life Game
8. Plotter
9. M61
10. All Around
Note: このアルバムの収録曲の幾つかは、新たにミックスされ2018年リリースの「New Classics Vol. 1 & 2」に収録されています。
レーベル:ブルース・インターアクションズ(Pヴァイン)
カタログ番号:PCD-24146
リリース日: Jan 23, 2004
アートワーク: Paradise Jam
マスタリング: Masayo Takise (M’s Disk)