Captain Funk – Dancing in the Street

タグ: ダンスブレイクビーツ70年代エレクトロニックロック。 Categories: Captain Funk

人気曲「Home Sweet Home」「Rock on the Floor」「Dancing in the Street」を含む、7曲入りミニアルバム。『Bustin’ Loose EP』、そしてミックスCD『Style#08』の成功に続き、オオエはレジデント・パーティーMACHINEGUNやその他で行う国内外でのDJパフォーマンスにさらにハイライトな瞬間を盛り込むための「ひねりの効いた、アップリフティングなダンスミュージック」を制作することに力を注いだ。CDに加えて、2種類の12インチバージョンがリリースされた。

ライナーノーツ

(CD盤に収録)

確かにこれまでもキャプテン・ファンクの魅力は多彩な音楽性にあった。

ちょっとおさらいをすると、98年5月リリースのデビュー・アルバム『Encounter With. Captain Funk』はZapp /ロジャー・トラウトマンの魂が息付くエレクトロニック・ファンクのショーケースだった。そこにはPファンク直系のモロなファンクもあれば、メロウなジャズ・テイストもあった。続く98年12月の『Bustin’ Loose ep』は音楽の幅とユーモアの量がアップし、長い音楽史の中でのくパーティー感覚>を4曲に凝縮した作品だった。つまり60年代テイスト/ R&Bのダンス・パーティーもあれば、80年代ブルックリンでのヒップホップ/ファンクのブロック・パーティーも同居する傑作だったということだ。そして99年4月リリースのミックス CD 『Style #8 – Bustin’ Out 74 Minutes Mix』では、これらの音楽性がキャプテン・ファンクの頭の中で一線上に繋がっていることを証明してみせた作品だった。膨大なリミックス・ワーク等を経て遂にドロップされるのが、このミニ・アルバム『Dancing in the Street』ということになる。

それにしても、本作におけるこれまで以上のゴッタ煮具合って一体何なんだ!!

サザン・ロックあり、ウィルソン・ピケットばりの R&B あり、ゴスペル・コーラスあり、テクノ・ポップあり、エレクトリック・ファンクあり、ニュー・オリンズ風ホーン(しかも生)あり、カントリー・ロックあり、ブルースハープあり(これも本人がプレイする生!)、ワシントン・ゴー・ゴーあり、カリプソ風味のスティール・ドラムあり…等々。これまでの音楽性を雪だるま的に包括した上で、その雪だるまの直径が約1.5倍くらいに成長しているといった感じか。しかも、ダウン・トゥ・アースな感覚まで備わっているのが嬉しい。ある意味、ベックがルーツ・オブ・アメリカ探訪と全く新しいサウンド・クリエイトを両立させているのと意外と近いところに居るのではないかという気すらしている。

ライナーノーツ後半
ここで1曲1曲を解説するかわりに、キャプテンに関して少々。キャプテン・ファンクはタツヤ・オオエという一人のインテリ青年によるワンマン・ユニットだ。96年にイタリアのレーベルから2枚のシングルでデビューした後、サブライムから正式にワールド・ワイド・デビュー。上記に挙げた通り、これまで2枚のアルバム(うち1枚はミックスCD)と1枚のマキシ・シングル、そして3枚の12インチを発表してきている。ちなみに1枚目のアルバム『Encounter with』はあのロジャー・サンチェスが盛んにクラブ・プレイし、マキシ・シングル『Bustin’ Loose EP』はノーマン・クックやジャングル・ブラザースまでが絶賛した。また青山マニアック・ラヴでのレギュラー・パーティー 「BBB9000」を中心にDJとしても活躍。99年の夏もフジ・ロックフェスティバルやロンドン、シンガポールなど各地を大いに沸かせた(ちなみに僕は98年11月フランス最大のテクノ・フェス GLOBAL TEKNOでキャプテンのライヴ・パフォーマンスに同行したのだが、隣接するテントのダフト・パンクの客が音につられて流れ込んで来る様は痛快だった)。その他、オリジナル・ラヴ、パフィ、ファンタスティック・プラスチック・マシーン、ケン・イシイ、電気グルーヴ、スケボー・キングなど、数多くのアーティストのリミックスをこなす。

と、こんなこと書いておいて矛盾しているようだが、キャプテン・ファンクはもはやクラブ・シーン云々という説明では括れない広いフィールドに辿り付いてしまったようだ。「もしヴァン・ダイク・パークスが黒人だったら」「もしグラム・パーソンズが生きている内にサンプラーが開発されていたら」といったような、音楽ファンだったら誰しも夢想してしまうような“もし”を、具現化するだけの音楽的センスと力量を併せ持つクリエイターがやっと現れたのだ。 あらゆるカードが出尽くしたかのような停滞感が漂う今の音楽シーンが、キャプテンのことをダンス・フィールド にとどめておく訳が無いだろう。

自身のレーベル Machinegun を立ち上げ、溢れ出るセンス・オブ・ワンダーをどんどんと形にしようとしている今後のキャプテンが僕はとても楽しみでならない。本人の話によるとこの盛り沢山なミニ・アルバムですら、2000 年のリリースが予定されている次のフル・アルバムへのイントロダクションに過ぎないというのだから。それまでは、このCDを何度も聴きながらキャプテンと巡る音楽紀行を楽しむとしよう。

今村健一

トラックリスト

1. Home Sweet Home
2. Rock on the Floor
3. Dancing in the Street
4. Caribbean Kickin’
5. Home Sweet Home (Space Raiders Mix)
6. Twist & Shout (Krafty Kuts Mix)
7. Home Sweet Home (Edit)

レーベル: Music Mine
カタログ番号: MKCS-1024
リリース日: Dec 16, 1999
アートワーク: ADS(アントニオ・デザイン・サービス)
マスタリング: Masayo Takise (M’s Disk)

ストアリンク

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Tatsuya Oe Updated: 2月 15, 2022